学際デザイン研究領域とは DESIGN

Diploma Policy

旧きを知る文化・伝統の探求力と、未来を構想するデザイン思考の創造力という両軸を主とした学際的実践によって、地域、社会に対し、創造的に働きかける高い構想力を身につけた人材の輩出を目的としています。

これからの社会に必要な思考力を養う

今、社会が求めるのは、社会の課題を解决し、人類の新たな価値を創り出す「創造的な思考能力」です。ビジネスの世界でもデザインや芸術的感性が重視されつつありますが、方法論をしるだけでは不十分です。個々の芸術に対する理解を深め、洗練された創造的思考を養い、新しい価値やビジョンを示すためにも、社会と芸術との新たな関係から探る必要があります。

高度学習の拠点へ

学際デザイン研究領域は2020年にスタートした100% e-learningの修士課程です。「デザイン思考による創造」と「伝統文化の探究」を両軸として、暮らしや社会の課題に対し学際的に探究するコースです。全国から幅広く人材を集めるために「オンライン大学院」として開設します。

 本領域では、芸術修士=MFA(Master of Fine Arts)を修得することが可能です。流行のように扱われるデザイン思考やリーダーシップ教育とは一線を画し、自らのヴィジョンの確立をふまえて社会に提案するために、徹底したグループワーク(共創)によるカリキュラムを設計しています。短期のセミナー等で得られる性急なスキルアップではなく、地道な探求と考察の積み重ねによって得られる「体得」を目指します。

 本領域におけるマスターとは、修士号(=master)のみならず、自分の取り組むテーマにおいて、「物事の本質をつかみ、それを的確かつ魅力的にするための問いを見つけること」と、それによって、そのテーマの「問題を解決しようと実践したり、実践の支援をすること」のマスター(修得者・駆使できる人)になるということだと考えています。


領域長メッセージ
MESSAGE

 みなさん、ごきげんよう。学際デザイン研究領域にようこそ。

 近年、リーダーシップを育成する動きが近年顕著に見られます。しかしその一方で、そのリーダーの元で、ポジティブに賛同し、協業するためのフォロワー(ポジティブフォロワー)のための教育は見えてきません。先導者が必要なのと同時に、ポジティブフォロワーは社会に必要不可欠です。ポジティブフォロワーは、新たな価値を拡散し普遍性をもたらすことに貢献するでしょう。これをデザインに置き換えると、デザイナーを育成するのと同時に、デザインを理解しデザインをひろげる人たちを育成する必要があると考えています。デザインを広げていくポジティブフォロワーに必要なのは、教養と、教養から育まれた自らのヴィジョンと、得られた知識を知恵として生かす実践力だと思っています。そしてそれは、短期のセミナー等で得られる性急なスキルアップではなく、地道な探求と考察の積み重ねによって体得するものでしょう。私は世の中のデザイン教養のベースを底上げしたいのです。ポジティブフォロワーが増え、その中から本当の意味でのリーダーが生まれるのではないかとも期待しています。

 そんな思いを実現するために、2013年に100% e-learningの学士課程・芸術教養学科を立ち上げ、デザインの考え方やものごとを見つめるまなざしについて多くの社会人に伝えることができるようになりました。現在では3100名を超える在籍者となりました。
 そして、満を持して、2020年、学士課程の学びを更に学びを深め、実践する場として、大学院学際デザイン研究領域を開設しました。昨今、注目を集めているデザイン思考・アート思考を含みながらも、もっと広義なデザインの考え方を伝えて、デザインを広げる実践力をもったポジティブフォロワーを排出していきたいと願っています。

 また、以上のことを実現するために本領域では、デザイン思考・アート思考と並行して、伝統文化を再考するという、過去を検証する学びを取り入れます。伝統を再考=みつめなおすためには、歴史を探求することが必要不可欠ですが、それは過去から教訓を得るということではありません。今に遺されている資料・史料をもとに、様々な側面から思考し、認識する実証的な手続きを経て、はじめて深い理解へとつながるのです。それは、私たちが生きていく上で、ものごとを考える際のバックボーンとして役立つことでしょう。

 伝統文化をみつめなおす過去を探求する学びと、デザイン思考・アート思考による現在〜未来を構想する学びの両軸により、答えが確定していない、新たな問いを見つけること、そして、その問いを解決するための実践力の育成を目指していきます。
 現在、M2生は、ゼミにおいて厳しくも楽しい研究の段階を実践しています。M1の1年間、文字通り切磋琢磨、喧々諤々のグループワークを経験し、2年目となった彼らの意欲的な対話からは、多様な創造的挑戦が起こりつつあります。それに追いつけと、M1生も必死に取り組んでいます。私たち教員も真剣です。様々な領域で活躍する魅力的なメンバーによる化学反応の成果は、「修士研究」からご覧いただけます。
 どうぞよろしくお願いいたします。

領域長 早川克美


教員紹介
TEACHER

早川 克美

早川 克美はやかわかつみ

領域長・教授

1964年、東京都生まれ。
F.PLUS代表。環境デザイナー
武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科卒
東京大学大学院学際情報学府修了(学際情報学)

GKインダストリアルデザイン研究所を経て、独立。
「人と空間」の最適な関係を構築する環境デザイナー、「学習環境のデザイン」をテーマにした研究者、「感性・知性を育む学び」を推進する教育者として、3つの活動の有機的な連携に取り組んでいる。著書に「デザインへのまなざしー豊かに生きるための思考術」(藝術学舎出版)がある。グッドデザイン賞金賞、JCDデザインアワード審査委員特別賞、SDA賞サインデザイン優秀賞、キッズデザイン賞ほか、受賞多数。趣味は上手くならないながら夢中なサーフィンとウクレレ。

浅井 由剛

浅井 由剛あさいゆうごう

准教授

1967年、静岡県沼津市生まれ。
株式会社カラーコード代表取締役・アート思考研究会代表幹事・静岡県地域づくりアドバイザー。
武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科卒。

大学卒業後、3年間、世界各地で働きながらノマド生活を送る。
その際に触れた、多様な価値観、生活様式の違いが本格的にデザイナーに進むきっかけとなる。帰国後、食品雑貨業界、二輪業界を経て2008年株式会社カラーコード設立。デザイン制作をするかたわら、ノンデザイナーのためのデザイン講座、企業研修の講師をはじめ、子ども達とローカルマガジンを作る、創造性育成プログラムをおこなっている。現在は、アート思考、デザイン思考を活用した地域づくり、観光ブランディングを大手企業と協働している。

野村 朋弘

野村 朋弘のむらともひろ

准教授

1975年、北海道生まれ。
著書に『諡 −天皇の呼び名』(中央公論新社)、『伝統文化』(淡交社)、編著に『史料纂集 宇治堀家文書』(八木書店)など。
詳しくはhttps://researchmap.jp/t-nomura

幼少の頃から歴史好きに育つ。「歴史では食べていけない」といわれ、工業高校に進学。上京して郵便局員として公務員生活を10年ほど。その間に大学に二度入学し史学科で日本中世史を専攻。職場で異動の話が出たので通学出来なくなると思い、公務員生活にピリオドを打ち大学院へ進む。それからは持って生まれた器用貧乏さで、歴史学のデータベース構築を母校の國學院大学や、東京大学史料編纂所で行う。「あれ、野村くんって歴史のひとだっけ?」といわれながら、さまざまな分野に迷い込み現在に至る。

下村 泰史

下村 泰史しもむらやすし

教授

1964年、東京都生まれ
東京大学農学部農業生物学科緑地学専修卒業。

住宅・都市整備公団(現・都市再生機構)の技術職員として、都市設計の実務経験を積む。2000年以降は京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)にて教鞭をとるとともに、いくつかのNPO法人の立ち上げや運営にも関わる。ダム水没集落を灯りによって再現するインスタレーション、区画整理地区における町割の研究、伝統を再解釈した盆踊り歌づくりワークショップなど、さまざまな角度から共同体の中に立ちのぼる風景を模索し続けている。一級造園施工管理技士、一級土木施工管理技士、技術士(建設部門:都市および地方計画)、博士(農学)。著書に「はじめての生態学 森を入り口に」(2019、藝術学舎)、「京の筏ーコモンズとしての保津川」(2016、ナカニシヤ出版、共著)、論文に「近代京都の土地区画整理事業地における町割についての研究」など。