仲間ごと化を介した⾃分ごと化に関する研究

  • 早川ゼミ

早川ゼミDチーム
小畠 彩香
仲井 亜紀子
村 真之介
湯川 晃平
酒谷 雅典
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 社会課題を自分ごと化できていない人が多数いることに着目し、自分ごと化にはどうしたらいいかをリサーチクエスチョンとして取り組んだ研究である。先行研究からは、社会課題を自分ごと化するには8つのフェーズ(石井,2020)があること、自分ごと化する範囲を個人を起点に5段階で整理できること(CHANCE事務局,2022)がわかった。また、「自分ごと」を捉える範囲において「仲間ごと」という捉え方が存在し、学術研究として新規性があることから、仲間ごとを見据えた上で、リサーチクエスチョンを「自分ごと化には何が必要か?」とした。

 観察・共感・洞察のフェイズでは、自分達が自分ごと化した経験の調査・自分ごと化する過程の仲間の影響の調査・仲間の影響の深掘り調査を行った。その結果、「自分ごと化体験には、認知→理解→当てはめる→捉え直す→行動の5ステップがあること」「自分ごと化がおこるステップでは、伝聞・内省・行動方向性決定を経て、行動をしており、5ステップの後半では仲間の影響が大きいこと」「仲間の影響がおこる要素として、仲間の後押し・大切にしている想いを思い出す・考えが深まる、などがあること」がわかった。
 この調査結果より、他者との距離が縮まり、意識変容が起こった結果として「仲間ごと化」が起こり、自分ごと化するには仲間ごと化が有効であることがわかった。
 この発見を踏まえて「自分では行動できないことが、仲間で一緒に行動することで、自分で行動するデザイン」を考えるため、タックマンモデル(Tuckman,1965)・社会的認知理論(津田・石橋,2019)・内発的動機付け(Desi & Frust,1999; 佐藤,2018)を参考に、仲間ごと化を介した自分ごと化モデル(以下NGKモデル)を作成した。

 次にNGKモデルの実証に向けた手法として、「感謝の気持ちを伝えること」をテーマとしたワークショップ(以下WS)を2回実施した。

 モデルを実証するための検証方法についてはアンケート調査(有効回答数20)とインタビュー調査(17名)を実施した。


 検証結果は図4に示す。ほとんどの被験者はWS体験後に意識が変容し、行動をしていた。また、NGKモデルでは、準備期から維持期までに仲間ごと化がおこり、仲間ごと化フェーズと自分ごと化フェーズが重なり合うことがわかった。更に、自己効力感・内発的動機付けの高まりは、意識変容・行動変容に繋がるといえ、「仲間ごと化を介した自分ごと化」に必要な要素として、「自分が大切にしている想いを思い出した」「問いかけで、自分の考えが深まった」「後押しがあったからこそ行動ができた」の3つを実証した。
 仲間ごと化がおこるとは「仲間からの問いかけによって内省がおこり、一緒に行動して受けた影響によって気づきや発見を得る。その結果、自己効力感の高まりと内発的動機付けの高まりに繋がる。さらに問いかけや後押しが、自分が以前から大切にしている想いと繋がることで自分でも行動をしたいと思うこと」であることがわかった。

 以上の検証結果を踏まえ、本研究の結論としてNGKモデルを図5に提唱する。

 本研究では、仲間ごと化を介した自分ごと化の有用性を示すことはできたが、より良い社会を創るためには、実証したモデルがどのようなテーマや手法においても有用であることを示す必要がある。その為には、今後は社会課題等の自分達から遠いと感じるテーマにおいても適応できるように、モデルの改良を計りながら汎用化を検討していく。