弱い紐帯の構築につながるインフォーマルコミュニ ケーションのデザイン

  • 早川ゼミ

早川ゼミCチーム
荒 隆紀
佐藤 安弘
谷中 迪彦
間宮 麻美
三木 政英
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新型コロナウイルス感染症の流行に伴うテレワークの浸透は、働き方に革新をもたらし、効率性の向上や通勤時間の削減などのメリットを提供した。しかし、この変化は職場内における雑談や日常会話といった「インフォーマル・コミュニケーション(以下、IC)」の減少を引き起こしている。職場におけるICは、Granovetter(1973)が提唱した”弱い紐帯関係”構築のきっかけづくりにとって重要であり、今後のオフィス内の人間関係にも大きな変換点が訪れていると考えた。ICは、人間関係の構築、協働促進、創造性向上などに寄与することが先行研究から示されているが、国内オフィスにおけるIC発生の促進要因と阻害要因に関する調査研究は少ない。そのため、「国内オフィスにおける対面のIC発生の促進・阻害要因」をリサーチクエスチョンに設定した。研究では、アンケートや国内外を含めたオフィスでの参与観察を実施し、ソフト、ハード面それぞれからICの促進要因・阻害要因を抽出した。(図1)

次に、実際のオフィス内でのIC発生場所を観察し、特に喫煙所のICに着目した。喫煙所利用者へのフォーカスインタビューによって、喫煙所でのICにおける循環サイクルを「タバコミュニケーション好循環サイクル」としてモデル化した。(図2)

これらの要素を盛り込み、非喫煙環境でも適用可能な対面コミュニケーションの促進プロダクトとしてCCC(Cigarette Communication Card)を開発した。非喫煙環境にあえて本物のタバコの箱を模した意匠を設えることで興味を引くよう設計し、箱の中のカードのお題によって、その場にいる職員間での雑談が誘発されるデザインとした。(図3と映像1)

実装テストでは、異なる業態の企業において設置前後でアンケートを実施し、その効果を検証した。結果として、CCC利用により、休憩室での新たな対話の発生とともに職務満足度の向上も認められた。(図4)

今後は、CCCそのもののプロダクト改良を続け、オフィスの中でも休憩室ではなく、研修会などの様々なシーンで使用されるものに育てていきたい。そして、最終的にはCCCを誘引として、より多くの企業でICそのものの価値が見直され、職員間での趣味や嗜好性による分断を生まずに、自然発生的に新たな人間関係を生み出す文化が日本の中から生まれることを願っている。