弱い紐帯形成に向けた地域愛着を高める活動のデザイン

  • 社会デザインユニット

早川ゼミ 社会デザインユニット Fチーム
中村 裕美
奥野 和弘
菊地 雄太
柚本 直子
金丸 耕平
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1.研究背景  

大都市東京では、人との関係性において、世間話をする程度の「弱い」つながりを望ましいと感じている人が多い一方で、人間関係の希薄化や孤立感の増大がしばしば指摘されている(※1)。 ※1 内閣府『社会意識に関する世論調査』(令和6年10月)  先行研究では、弱い紐帯が社会的包摂や相互理解と社会的つながりの再構築等に寄与することが示されてきた。しかし、都市居住者の日常生活において、弱い紐帯がどのような心理的・行動的プロセスを経て形成されていくかについては、十分に検討されていない。そこで、本研究テーマを「大都市である東京において、どのような日常的な活動によって、弱い紐帯形成の後押しをできるだろうか?」と設定した(※2)。 ※2 本研究における「弱い紐帯」の定義とは、同じ地域住民がそれぞれの違いを尊重しつつも、お互いの存在を気にかけ、少しだけ歩み寄り、人の温かさや安心を感じられる関係であり、挨拶以上のちょっとした会話ができる関係を指す。

2.観察・共感・洞察  

地域愛着を「まちの性質」「まちの機能」「まちの人々」「まちの外部評価」の四つに分類した上で、東京都在住の男女500名を対象にアンケート調査を実施し、相関分析、重回帰分析を行った。結果を踏まえて、「弱い紐帯形成のプロセス」を導き出し、弱い紐帯形成への肯定的な感情に最も強く寄与する地域愛着のタイプが「まちの人々への愛着」であることを明らかにした(図1)。

3.創造視覚化  

アンケート調査から、プロセス初期段階である「まちの人々への関心」を高めることができれば、最終的に「弱い紐帯の形成」につながることが示唆されたため、本研究では「まちの人々への関心を高める」手段として、都市に住む人々が、日常的かつ能動的に実践可能な「まち歩き」に着目した。まちの人々への関心を高めるような「まち歩き」を構築するため、まちの人々への視線の誘導、五感を使った体験の喚起、創造性の刺激、気づきの深化の観点を盛り込んだ「まち歩き手帖」を設計した(図2,3)。

4.プロトタイプ・テスト

本実験を通じて、「まちを見る視点」への変化が被験者の8割以上で確認され、「まちの人々への意識」が高まったことが明らかになった。さらに、まちの人々への関心を持った被験者の一部は、1〜2回のまち歩きにより、まちの人々に対して愛着や安心感を抱くに至っている。短期的な実験であっても、まちの人々に関心を向けることで「まちの人々への愛着」が高まり、さらに、弱い紐帯形成に対して肯定的な感情を抱くなど、弱い紐帯形成への後押しができる可能性が示唆された(図4,5)。

5.結論  

本研究では、地域愛着における弱い紐帯形成プロセスの妥当性を検証した。また、まち歩き手帖を用いたまち歩きにより、まちを見る視点が変化し、まちの人々への関心が高まり、弱い紐帯の形成を後押しできる可能性を明らかにした。なお、まち歩きの実践により、地域住民への関心を高め、弱い紐帯形成のきっかけができることで、社会的孤立等の社会課題解決にも寄与すると考える。