課題解決型のオンライン会議におけるファシリテーティブな場を形成するためのデザイン

  • 社会デザインユニット

早川ゼミ 社会デザインユニット C チーム
貝沼 圭吾
久保 あかり
河野 香織
成瀬 優太
向井 一宏
矢田 萌
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1.研究背景・リサーチクエスチョン
社会人大学院のチーム研究にて、共通作法がなく特定個人へ負担が偏る「会議の機能不全」を痛感。これは現代組織の共通課題でもあり、社会人の約7割が会議に不満を抱き、特にオンラインでは発言しづらい等の不満が顕著である1。こうした要因は共創機会を喪失させている。プレ調査での自他チーム比較の結果、円滑なチームには「可視化」や「全員ファシリテーション」のヒントが存在した(図1)。そこで本研究ではチーム全体でファシリテーション機能を促す「仕組み」を追求する。

図1 自チームと他チームの対話構造の違い (執筆者作成)
註1:Job総研「全国20-50代男女476名へのインターネット調査(2025.6)」、https://jobsoken.jp/info/20250714/ (2025.12.29閲覧)

2.観察・共感・洞察、問題定義
ファシリテーションスキルは属人性が高く習得困難である2。本研究は支援ニーズの高い「課題解決型会議」を対象に会議の苦手層へ着目した。社会人125名への調査の結果、苦手意識は進行スキル(≒技術的課題)と心理的不安(≒適応課題)が複雑に関連する実態を特定3。さらに得意層との比較から、機能不全はスキル不足のみならず、誰が進行しても回避困難な「構造的欠陥」に起因すると結論づけた。故に個人資質によらず場の状態に着目する長畑(2015)の「ファシリテーティブな場の6条件」(以下、6条件)を基盤に4(図2)、構造的アプローチを試みる。問題定義は「課題解決型オンライン会議において、いかに『ファシリテーティブな場』を形成できるか」とした。

図2 「ファシリテーティブな場の6条件」(長畑,2015より引用)
註2:安斎勇樹・東南裕美、「ワークショップ熟達者におけるファシリテーションの実践知の構造に関する記述研究」、日本教育工学会論文誌、2020
註3:ロナルド・A・ハイフェッツ他・水上雅人 訳『最難関のリーダーシップ変革をやり遂げる意志とスキル』、英治出版、2017
註4:長畑誠、「ファシリテーション再考-『ファシリテーター』から『ファシリテーティブな場作り』へ-」、ガバナンス研究 11、2015

3.創造・視覚化
6条件を具体化し「構造・情緒・関係性」の3層モデルへ再編した(図3)。構造領域では榊巻(2015)の会議プロセスを可視化し5、進行負荷を分散。情緒領域ではRussell(1980)の二軸理論に基づき6、環境要因を操作し集中と安心が両立する状態を創出。関係性領域では対人リスクを低減し試行錯誤を許容する場を構築。これら3層の連動により、属人性を排し「構造」起点のファシリテーティブな場が成立すると仮定した。

図3 「3層モデル」(執筆者作成)
註5:榊巻亮『世界で一番やさしい会議の教科書』、日経BP社、2020
註6:Russell,James A.(1980).A circumplex model of affect.Journal of Personality and Social Psychology,39(6),1161–1178.

4.プロトタイプ
3層モデルに基づき会議支援ツール「Kaidora」を開発した。構造面では4つの道順による進行ナビ等を実装し、議論が迷走しない仕組みを構築。情緒・関係性面では交通ルールによる安全確保やBGM、AI楽曲生成による体験のポジティブ化を実現。各層連動の設計により心理的ハードルを下げ、チームの創造性を引き出す環境を提供する(図4)。

図4 会議ドライブナビ「Kaidora」の設計(執筆者作成)


全体流れの説明動画

5.テスト・評価
社会人・学生30名の実証実験の結果(図5)、3層モデルの各指標に対して全領域で改善を確認し「議論の質」が最大幅で向上した。また心理的安全性の初期値が低い苦手層では改善率100%を記録し、構造的支援が技術的・適応課題解消の特効薬となると実証。得意層では構造による窮屈さが生じたが、その強制力が議論の底上げと相互支援の余地を創出した。加えて、自分たちの文脈へ最適化するカスタマイズ行動も確認された。

図5 「Kaidora」使用前後の検証と評価(執筆者作成)

6.結論と展望
本研究は構造的アプローチにより、苦手層を含む参加者が対等に参画できる「ファシリテーティブな場」を実現した。分析の結果「構造介入がまず行動を変え、結果として心理的安全性が構築される」変容プロセスを特定(図6)。今後は会議規範を習得する教育ツールへの展開や、習熟度に応じガイド強制力を調整し、得意層による自律的なプロセス最適化とも両立するモデルへの移行を目指す。

図6 構造的アプローチ(執筆者作成)