太田風土記

  • 野村ゼミ

野村ゼミAチーム
板橋 嶺
村井 裕一郎
真殿 修治
栗原 正博
岩井 秀樹
鶴岡 優子

ブランド力が高い地域ではなく、ありふれた日常の街で地域の歴史と文化を探求し、研究成果を社会課題解決のため応用展開したいー。この問題意識から、群馬県太田市を研究対象とした。太田風土記は4つの章で構成し、土・月の章で「過去からの文化資産」、風・地の章で「未来の文化資産」について考察をまとめた。

土の章では、太田市固有の文脈を「時層」化し分析した。6つの時層(古墳、新田荘・新田義貞、宿場町、養蚕、工業、現代)に基づき、8つの分野(地勢農業、行政活動、商業、教育、観光交通、食文化、信仰、気質)で太田の特徴を整理した。

月の章では、現地調査で感じた違和感をもとに太田の陰を見つめた。太田には中島飛行機に代表されるような”自助”、行政によらない民間の力で”興す力”で成長をしてきた歴史があり、これらを「過去からの文化資産」と特定した。また現代では、SUBARU中心を前提とした行政主導の「ものづくり」偏重の街づくりが、『自助で興す力』を失わせてしまっているのではないか、という課題に行き着いた。

風の章では『自助で興す力』を取り戻すため、6名の多角的な視点で「未来の文化資産」を探し、利活用の方法を考察した。「シビックプライドの醸成」「中心市街地活性化に向けた公共空間の在り方」「地域文化の担い手としての中小企業経営者の地元帰還について」「地域ブランドとしての太田ニットの可能性」「グレインサンダースと高校生」「外国人向けリカレント教育」の6つの個人研究をアクションプラン集とした。また地の章では、6つの提案を相互連携させることでさらに有効活用できるとした。

本研究は風土記の編集を通じて、歴史の中に眠った地域固有の文化資産を探求し、未来に向けた利活用案を提案する取り組みである。ディテールに焦点をあて地域の具体的な変化を目指すアプローチは、平均化しがちな「まちづくり」への新しいケーススタディと言えるのではないだろうか。

歴史の中に眠った地域固有の文化資産を探求し、未来に向けた利活用案を提案する本研究のプロセス「ドーム型モデル」。他地域への応用も期待できる。
地域固有の特徴を文脈として探る「時層」フレームワーク。企業や人物への応用も期待できる。
縦割りになりがちな行政の提案に比べ、相互連結を特徴とする太田風土記のアクションプラン集。