江戸湊 水辺の風土記

  • 野村ゼミ

野村ゼミEチーム
大塚 匠
鈴木 健
中上 俊介
柳原 茜
渡部 恵弥子
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1.概要(対象地域と目的)
本研究は、現在の東京都中央区隅田川河口域にあたる新川・佃・湊一帯、かつて江戸の港湾機能の要所であった「江戸湊」を対象とし、地域の文化資産を風土記として編纂・利活用を考察した。「水辺」というくくりで都市の歴史を遡ることで、現在の行政区単位では見えてこない地域の独自性と文化資産を規定し、地域固有の文脈を創出した。

2.風土記のコンセプト・地域への役割・意義
風土記のコンセプトおよび地域への役割は、1.関係性の構築、2.風景の醸成、3.愛着の形成、4.語り継ぐ仕組み、の4つである。水辺に意識を向けることで人と人の関係性をシームレスにする、また人々が地域に対して愛着と自己参画意識を芽生えさせる一歩目を後押しする媒介として、本風土記が水辺と地域の人々を関係に変化をもたらし、コモンズとしての水辺の形成の一助となることを期待する。また、地域に新たなまとまりを生み出すことを目指す。

3.共同研究で規定した地域の文化資産
共同研究において、江戸湊という新たな地域のまとまりを創出しうる6つの文化資産(図1)を規定した。

4.風土記の概念図
共同研究で見出した「江戸湊」(みなと)の文化資産を、鈴木『「コミュニティ活動」からみる地域特性』(まち)、中上『江戸湊住民の水辺に対する意識の変遷』(ひと)、渡部『橋梁・橋詰広場にみる水辺空間の展開と可能性』(はし)、柳原『舟運を通した水辺への眼差し』(ふね)、大塚『 漁師・魚商人「目利きの構造」』(こころ)と題し、個人研究で深めた。さらに再統合のプロセスを経て、地域課題の解決および実現したい未来像(みらい)に向けた提案を制作した(図2)。

5.地域固有の課題と問題解決に向けた提案
水辺を語る人が増え、水辺に人が集まる風景が増えることを地域の未来像とした。地域の未来の担い手である子供たち(小学生)が、地域と大人達を刺激するハブとなり、「人と水辺」の歴史文化の保存・活用が自立自走することを未来像への道筋とし、江戸湊の文化資産の利活用提案を試みた(図3)。