天童の人と風土
- 野村ゼミ
野村ゼミBチーム
大橋デイビッドソン 邦子
佐藤 明
辰巳 清
福寿 美佐
山村 将士
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本研究は、地域特有の課題の解決を目指すグループでの学際デザイン研究の一環として、山形県天童市を対象に取り組んだものである。5人が2022年5月から2023年1月にかけて文献調査と、天童市において市民や関係者への聞き取り調査を行った(図1)。
本研究における問いは二つであった。ひとつは「天童人とは何か」を明らかにすることで、もうひとつは天童の地域特有の課題を特定することであった。
「天童人とは何か」に対して、佐藤は「死後結婚「ムカサリ絵馬」における信仰と供養」の研究から「死者とのこれから・未来を大切にする人」との結論に至った。山村は「天童木工と森の文化的景観」の研究から「手仕事への信仰という、ものづくりの精神性を継承する山の民」だと示した。福寿は「最上紅花継承活動の今後を考える」の研究から、「繋ぐ花を大切にする人、文化や伝統の価値を認め、取り入れ引き継ぐ意思を持つ人」だと定義した。 辰巳は「出羽桜酒造の経営理念」の研究から「周辺都市への恩恵を受け、仙台と山形からの地の利を活かす人」だと捉えた。大橋は 「ハッカ復活への取り組み」の研究から「レジリエンスの高い、逆境を乗り越える適応力のある人」だと認識した。以上の5つの側面が、我々が導いた天童人の姿であった。
「天童人とは何か」を特定することで明らかにできた地域特有の課題は「自主的な市民活動が育ちづらいこと」であった。行政主体の枠組みの中での市民活動は確認できるが、市民主導の活動は数例しか見当たらなかった。しかし文化の継承活動では、長期的な視点で担い手を育成できる自主的な市民活動こそが必要だ。
信仰心の低下やライフスタイルの変化などで活動を共にする地域コミュニティが醸成されにくくなったことと、歴史的に地域産業の多くがトップダウン型で隆盛してきたことが、自主的な市民活動が育ちづらい、天童特有の背景であることを確認した。
加えて、自主的な市民活動を育てるための提言を、各々の研究活動報告書に記載した(図2)。