南魚沼市 八海山麓地域の風土の研究

  • 野村ゼミ

野村ゼミAチーム
佐藤 隆彦
高塚 苑美
中川 悦宏
海老原 仁美
佐々木 淳
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 豪雪地帯である南魚沼市の風土は雪と山に強く規定される。中でも八海山の存在が大きく、我々は八海山麓地域を対象として、共同研究および個人研究を行った(図1、図2)。

 地域課題としては次の2点を見出した。1つは境界が曖昧になったことで、既存の集落で維持継承してきた文化資産の密度が希薄化したこと。次に、旧境界内で生きてきた世代と新しい境界内で生まれた世代では、共同体や維持継承されてきた文化資産に対する思いの強さに濃淡があることである(図3)。

 背景として考えられるのがこの地域の4つの時層である(図4)。文化が花開いた時代、貧しい農村時代、列島改造に沸いた雪国バブル時代、そして文化資産の価値が希薄化した文化喪失の時代である。
 これらの時層は、地域の人々の感情表出に影響したと考える。地域の人々と対話を繰り返す中で見出されたのは、「しねばなんねぇ」という精神性で、「厳しい自然環境と対峙する中で育まれた、こんな状況でもやるしかないという覚悟」である。さらに「お国自慢精神」も端々に感じることができた。しかし、それらは表面のしょうしさや、引け目感情に隠れてしまい、一時的な付き合いでは見えてこない。こうした独特の意識構造を我々は「レペゼン八海」と名付けた(図5)。レペゼンとは「代表する、象徴する」という意味で、HipHop文化で使われている俗語である。「自らが根ざす地域について「なんもねぇ」と言いながら、内に秘めた郷土愛を持ち、多少の見栄を張ってでもムラを背負い、見知ったライバルには負けないぞという意識」である。

 以上を踏まえ、我々は、地域の人々が自らの言葉で地域を語り、愛着を育むことを目的に「WEB版 八海の国風土記」「育てる歳時記」など4つのプロトタイプ(図6)を作成した。これらはいずれも地域の人々と共に育てることを想定したもので、地域への実装も進んでいる。今後はこの研究をもとに、政策提言や地域の人々との協働によるまちづくりへと発展させていく予定である。