「農家と消費者をつなげるコミュニティデザイン及び無人販売所のコミュニケーションデザイン

  • 大学院研究員

大久保 達真
服部 貴哉
杉浦 俊太郎
小池 りつ子
新城 香

研究概要

 農村活性化のため、農家と消費者をつなげる無人販売所を活用して、農家の思いや考えを消費者に伝え、農村への関心を高める試みを行っている。この無人販売所で消費者は、ストーリーパネルの農家の思いや考えを読み、料金箱で気持ちを伝えられる。
 この無人販売所の刺激の特徴を明らかにするために、2022年6月から2023年8月にかけて、群馬県昭和村の道の駅あぐりーむ昭和と群馬県片品村の道の駅尾瀬かたしなの無人販売所と有人販売所を群馬県高崎市と前橋市に出店し、それぞれのアンケート結果と料金箱のメッセージ分析を比較評価した。有人販売所は、無人販売所と同じパネルや料金箱を使用しつつも、陳列台の後ろにあぐりーむ昭和と尾瀬かたしなの職員と学生が立ち、接客を行った。
 無人販売所と有人販売所の購買者に対して、それぞれの販売所での購買体験や地域や道の駅への来訪意向、つながりへの意向について、アンケート調査を行った。3回のアンケート調査結果を比較評価し、無人販売所と有人販売所による昭和村や道の駅への来訪意向への影響の差異や無人販売所の活用に向けた課題を考察した。
 有人販売所の接客の刺激としての特徴は、道の駅職員が野菜やその調理方法を説明することであり、農家や道の駅、野菜の情報を受け取りたい購買者層へのつながりへの意向を高めることが分かった。無人販売所はその刺激がないことで、農家と思いや考えをやりとりすることを期待する購買者層のつながりへの意向を高めるが、この購買者層は少数派であった。
 以上より、より多数の購買者層とのつながりを作るという観点で、農家の語る思いや考えを伝えるメディアとしての無人販売所の刺激の課題は、購買者側での使用価値や価値共創を高めるような農家や道の駅、野菜の情報を提供することであることが分かった。

研究活動と成果

(論文投稿)
大久保達真、小池りつ子、町野香歩、新井健司、早川克美、森田哲夫:農家と消費者をつなげる無人販売所の顧客接点としての効果―道の駅あぐりーむ昭和の事例―、日本地域政策研究、第31号、pp.68-75、2023

今後の研究活動

今後の研究活動に向けての課題としては、無人販売所の短期的な出店では、購買後の購買者側での使用価値や価値共創の評価が実施できないため、より長期的又は定期的な出店やSNSなど継続的なコミュニケーションツールを併用した消費者と農家への効果の分析が考えられる。また、無人販売所には,農家や野菜の情報量を増やしてもメッセージが伝わるような情報メディアとしてのデザインの工夫が課題となる。