「理解と共感の場」の再創造によるコミュニティの持続について

  • 大学院研究員

土田 智

1.研究の背景
 生活様式の変容に伴い人々が水や川などコモンズとの関係性を失ったという社会課題に向けて、身近な市民主体の地域活動に見出されるコミュニティを、人々が集まる口実としても機能するような「場」として再創造し、無理なく持続させる方策を考察、提案した。

2.研究の動機
 野村ゼミBグループでの共同研究「伊那谷 水の風土記」で得た知見や諸課題を踏まえ、本研究では、より仔細にし、学会発表等(※1)に耐えうる程度の論考へと深めたい。また、提案する実装計画においても2つのコミュニティ・地域活動(※2)の状況を鑑みつつ具体化へと向けた活動を行う。

3.研究の意義
 本研究で考察した人々の関係性の視覚化・言語化や、情報化の手法「多様性・反復性・固有性の組み合わせ」・技術の浸透は、小さなコミュニティを無理なく持続させ、これからの時代に適した「創造的に縮充させる方策」として期待するものである。

4.研究の方法
 先行研究など文献調査およびコミュニティ関係者へと行う質的調査。
以下重点を置き調査内容を深めたものを列挙する。
①情報化・直会性といった文中で示すキーワードや概念の整理と定義
②一極に偏るのではなくバランス・循環することで「情報」が伝達される「多様性と反復性のループ構造」の具体的な事例を調査・分析・モデル化し、コミュニティ維持の観点から考察
③視覚化・言語化された「直会性」についての具体的事例の調査
④実装提案の対象となる地域活動「高遠ブックフェス&文芸賞」「高遠だるま市」関係者へのヒアリング
⑤西高遠エリアの狭い路地という固有資産の価値について考察

 山村の「世代を超えて持続する市民活動の長期継続要因」を6つ示した先行研究(※3)を指標とし、2つのコミュニティが「6つの継続要因」を満たす度合いや条件などについて図化し、批判的に考察を加えた。予想された「コミュニティ単体では6つの長期継続要因のすべてを満たすことは難しい状況」を確認した。
 そこで、一方の課題を一方が満たすような相互扶助的・相補的な関係性が見出されるという仮説とプロトタイプを、コミュニティ関係者に示した。さらに、今後の活動の未来デザインを構想・提案した。

(※1) 地域活性化学会などでの発表を目標とする。
(※2) 高遠文芸賞・ブックフェスは2020年の新型コロナ感染症以降、活動を休止中。高遠だるま市は2023年に再開。
(※3) 山村美保里「世代を超えて持続する市民活動の長期継続要因に関する研究ー下諏訪町湖浄連を事例としてー」土木学会論文集D1(景観・デザイン)、Vol.75、2019

研究活動と成果

次年度に研究発表できるよう、重点的に下記2点に関する調査・分析を行ない、記述を厚くした。 ①「多様性と反復性のループ構造」の複数の具体的事例(コミュニティ)の調査・分析・モデル化 ②視覚化・言語化された「直会性」についての具体的事例の調査 調査対象となるコミュニティは、いずれも2022年内は活動が滞り、関係者へのヒアリング等も最小限にとどめた。

今後の研究活動

新型コロナ感染症の落ち着いてきた2023年4月以降には、さらなる調査・分析を深め、研究発表へとつなげたい。