吉祥寺風土記

  • 野村ゼミ

野村ゼミCチーム
福田 龍二
田丸 翔一郎
江幡 祐介
都築 勝也
佐栁 融
鈴木 浩
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1.概要
 「住みたい街ランキング上位の吉祥寺を構成する要素と課題とは何か」を動機として、東京都武蔵野市の吉祥寺の町名がつく4つの地域と井の頭恩賜公園(以下、井の頭公園)を研究対象地域とした(図1)。

 
 

2.研究のプロセスと方法
 吉祥寺の風土を明らかにし、街の未来に繋げるために吉祥寺固有の文化資産の継承と利活用を検討した。まずグループ共同研究1として、吉祥寺の基本的な課題と文化資産の抽出を行い、リサーチクエスチョンとして、「吉祥寺の人々が知るべき、風土を形成してきた文化資産の変化と街の関係から見る未来に必要な視点は何か」を導出した。
 次に、個人研究として吉祥寺固有の文化資産を6つ選んで考察を行い、街の課題と解決策を検討した(図2)。最後に共同研究2として、個人研究を統合し課題を整理したうえで、吉祥寺の風土を明らかにし、文化資産を継承するための必要な視点と利活用について検討した。
 研究方法としては、文献調査、フィールド調査、ヒアリング調査などを行い、調査結果をグループでディスカッションして地域の特徴を表すキーワードを検討した。
 

3.共同研究1からみた課題
 吉祥寺は、街の観光地化や都市化によりその姿を変えつつ、文化を形成してきた。しかし、現在では井の頭公園をつくり出している湧水の危機や土地の分割による住宅地の緑の減少など意識しないと見えない関係があり、住民がそのような変化を知る機会が少ない。吉祥寺の文化は、井の頭公園などの自然文化を活かしてヒトとモノを呼び込み、ハーモニカ横丁や商店街など個性的だが連帯感のある人間文化を形成してきた。しかし、現在では商業的なブランディングにより画一化が進展し、そうした固有の文化が失われる怖れがある。


4.文化資産からみた課題
 吉祥寺固有の文化資産の中から、「地域表象」、「ハーモニカ横丁」、「商店街」、「井の頭公園」、「緑資源」、「短冊形地割」の6つを選び、それぞれの文化資産からみた吉祥寺について考察を行った(図3)。

 

5.文化資産からみた吉祥寺の風土
 文化資産の考察から吉祥寺の風土を3つにまとめた。
・来街者がもたらすイメージと吉祥寺固有の文化・歴史が混在することで、喪失と創造をくりかえす街
・井の頭公園は人を惹きつけ、ふれあいを創造する活動で街を活性化し続ける魅力的な大規模公園
・短冊形地割や緑という財産を築き、分割し、残った樹木が緑豊かなイメージを補完する街


6.リサーチクエスチョンの検証結果
 文化資産からみた吉祥寺の風土よりリサーチクエスチョンの検証結果として、以下の4つを得た。
・駅を起点とする偏った外部の視点が、内部の変化を見えづらくしている
・井の頭公園や商店街、横丁など駅を起点とする文化資産の変化を知り、変化から生まれた新たな価値を活かす仕掛けが必要
・吉祥寺の骨格である短冊形地割やイメージを形成する緑資源の変化に住民が目を向け、自らが価値を再評価し、必要性を認識できる取組が必要
・来街者などの外的要因により吉祥寺は喪失と創造をくり返してきたが、こうした新陳代謝が吉祥寺の文化を生む原動力であり、今後も継続する環境作りが必要
 以上のように、吉祥寺の風土を整理し、そのイメージを概念図として纏めた(図4)。