就職活動生の内省を促す対話カードの開発

  • 大学院研究員

瀬戸 亜美
三國 信夫
臼井 真由美
奥井 伸輔
青山 春華

研究概要

日本において、若者の入社後3年以内での早期離職が社会問題となっている。原因の一つに、就職決定時に内定先に満足できていない「不本意就職」がある(石黒、2017)。「不本意就職」学生は「本意就職」学生に比べると後の離転職経験が多く(高崎、 2016)、早期離職は若者のキャリア形成を妨げると言える(前田、2010)。しかし現状は有効な解決策に乏しい。 2021年度、我々は、就職活動生の対話と内省を促すため、一般的にコミュニケーションツールとして有効とされる対話カードに着目し、希望通りの就職決定ができない不本意就職を減らすことを期待して、デザイン思考のプロセスに則って就職活動生の内省を促す対話カードの開発をした(三國、2022)。効果検証では開発したカードを用い、筆者らが聴き手となり、被験者の大多数で内省の深まりが見られた。社会実装のためには、研究員以外が聴き手となっても有効性を発揮できることが必要であるが、本対話カー ドは研究員がその使用方法を理解していることを前提としており、研究員以外が聴き手になることを想定していない。 就職活動生が他者の就職活動について聴くと、自分とは異なる考え方に触れ、内省をもたらす効果が期待できる。就職活動ではないが、学級経営について、教師が他者の実践を傾聴することにより、内省し気づきを得ることが報告されている(伊藤、2021)。 また、臨床心理実習において被傾聴体験が良い聴き手になることを支援する報告があり、対話カードで話し手を経験した学生は良い聴き手になり得る(山田、2021)。就職活動生が聴き手になることにより、就職活動生同士で話し手・聴き手を繰り返すことで、就職活動に関する内省と聴く力の向上を得る好循環も期待できる。2022年度研究では、就職活動生の内省を促すツールとして対話カードを就職活動生同士で利用できるよう改良し、その効果検証を行った。さらに、2023年度には対話カードの社会実装を目指し、研究を継続した。

研究活動と成果

京都芸術大学紀要27号 論文投稿

今後の研究活動

社会実装に向けて、実際にカード普及のキープレイヤーである大学教員や大学キャリアセンターはどのような課題を抱えているのかを明らかにするという課題を踏まえ、対話カードに付随するマニュアル等を開発する。