心地の良い居場所生成に寄与するオンラインコミュニケーションの研究
- 大学院研究員
梶田 直美
研究概要
2021年度から2022年度にかけて京都芸術大学大学院学際デザイン研究領域(以下IDS)において、「社会人のオンライン学習環境における心地の良い居場所を実現するためのツールの開発」と題した研究を行い、コミュニケーションツール「ANnKA-HOOK」を作成した。オンライン学習を行う社会人学生同士が学習目的以外で行う交流に関し、非同期のコミュニケーションツールによる場の提供とプロトタイプテストを通じて入学間もない学生の反応特性や得られる効果について一定の見解を得た。2023年度は対象を社会人から難病患者へシフトし、オンラインが主体となるコミュニティの場を参与観察を行った。
研究活動と成果
筆者も罹患している希少疾患である全身性強皮症の患者が所属しているオンライン患者会(LINEオープンチャット利用)とX(旧:Twitter)で病名を明かしている同患者を対象に観察を行った。LINEオープンチャットとXの両方に参加しているユーザも多く、「病気や受診の悩みはOC」「XはOCで相談・投稿するほどではない病気の悩みや自身の記録と雑談」といったように「場の使い分け」をしている様子がうかがえた。
今後の研究活動
先の研究にて「社会人を対象としたコミュニケションツール研究ではオンラインでの心地の良い居場所の形成は可能」と結論付けた。観察を行った全身性強皮症は患者数も少ないことから同じ疾患をもつ者同士が現実の場で繋がりを持つことが難しくオンラインでの繋がりを求める患者が少なくない。オンラインコミュニティに参加することは患者にとって精神衛生上でも大きな価値を持っている(※4)。今回の観察からオンラインでのコミュニケーションにて「場の使い分け」をしている傾向がわかりつつある。それぞれのコミュニケーションの特性、それぞれの場の使い分けとコミュニティ醸成要因など、引き続き参与観察を続けながら、研究活動を進めたいと考えている。