芸術を通してAweを引き起こすためのプログラムデザイン
- 早川ゼミ
早川ゼミFチーム
北林 梓
柴田 睦月
木村 亮
渡部 由紀子
松本 友哉
Aweとは、壮大な自然の美しさ・脅威、創造的な考え・構想、想像を超えた芸術・音楽に接した際に生じる「現在の認知的枠組みを更新する必要を知覚する広大な刺激に対する感情反応」のことをいい(Keltner & Haidt, 2003)、時間感覚が変容してより多くの時間を使えるように感じたり、未来の時間を想像することができて向社会的な行動をとるようになる、寿命が増す等の効果を生じる(Guan,Chen, et al., 2019、Piff et al., 2015、Stellar et al., 2018)。
現代社会を生きる上で興味深い効果であると思われたが、先行研究では、日本人を対象にしたものや芸術をきっかけにしたAwe体験に関するものがごく限られていることがわかった。そこで、日本人を対象に、芸術をきっかけにしたAwe体験を引き起こすためのデザインに取り組んだ。
デザイン検討のための調査では、①日本人は、自分の内面を見つめなおすことで身の回りのありとあらゆる対象から超越性を感じる文化的素養があるものの、現代日本人の芸術鑑賞の目的は、自分の内面が欲するものよりも権威が認めた作品を鑑賞したかどうかという点に向けられる傾向があること、②Aweを体験したことのある日本人は、したことのない人に比べて、自分の10年後の目標や夢に対して明確なビジョンが持てない割合が少ないことがわかった。
以上を踏まえ、芸術鑑賞と自分の内面に向き合うための内省ワーク動画の視聴を繰り返すプログラムを設計した。
検証の結果、①当該プログラムの履践は、Aweを体験したことがある人に対してAweを体験させる効果があること、②プログラムの履践により内省を促し、かつ、Awe体験をすることが、未来のビジョンを具体的かつ現実的にするためにはより効果的であることがわかった。また、当該プログラムの履践によりAweを体験するに至らなかった要因の分析により、他者とのつながりをより強く感じられるような仕組みを追加することで、Aweを体験する確率が上がる可能性があることもわかった。