社会人のオンライン学習環境における心地の良い居場所を実現するためのツールの開発〜ANnKA-HOOK〜
- 早川ゼミ
早川ゼミEチーム
梶田 直美
井上 和興
山田 亜紀子
佐藤 あゆ
社会人のオンライン学習環境において、学習目的だけではなく、学生同士のつながりによる新たな経験や学びの深まりという目的以上の価値を得たいとの期待がある。しかし、リアルな場で会う機会がなく忙しくて時間やタイミングも合わせにくい社会人学生たちは、つながりを作ることが難しいという課題に着目した。
先行研究では、コミュニティ内でつながりをつくる場としてサードプレイス(心地の良い居場所)の重要性が指摘されていた(オルデンバーグ2013)。しかしオンラインサードプレイスの研究はまだ少なく、私たちはオンラインの居場所に関する研究を進める必要性を確信した。
社会人学生たちがつながりを作る「心地の良い居場所」の存在がオンライン上で必要であると考え、自らが所属する京都芸術大学大学院学際デザイン領域をターゲットとしてツール開発(名称:ANnKA-HOOK)および検証を行った。
開発においては、「会話が自然に発生するきっかけ」があり、「時間の制約があっても」「気軽な内容でやりとり」ができ、「為人がわかる」心地よい居場所のデザインを目指した。具体的には、トップ画面となるダッシュボードには自然にアクセスしたくなるよう学習で使うサイトへのリンクやスケジュールを設置、色々な人と少人数で話せるよう定期的なグルーピング変更を実施、話の「お題」を提供するテキストチャット、写真やイラストを書き込めるホワイトボード、管理者が出す3つの質問をもとにした「人となり」がわかるプロフィール機能を備えた。
学生の協力のもと5 日間x2 回の検証を行った結果、居心地の良さを実現する重要な3要素(①「他者との関係性」があること、②「本来の自分でいられる」こと、③「未来への納得感」があること)のうち①と②について概ね達成できることがわかった。少人数でのグルーピング機能が適切な社会的距離をつくることに効果があり、お題の提供が会話やつぶやきのきっかけとなった。ただし③の達成に課題があり、ANnKA-HOOK による学生同士のつながりが将来へのポジティブな変化につながるには更なる工夫が必要だと結論づけた。そのためにはつぶやきを促すお題の設定やリアクション機能、ファシリテーションが重要である。これらの改善により、会話が継続しお互いの人となりが更にわかるという好循環が生まれ、より心地の良い居場所が実現できるだろう。
参考文献
レイ・オルデンバーグ. 2013. サードプレイス: コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」. みすず書房