芸予諸島とその周辺地域に内在する⽂化資産の発⾒と定着を⽬指すボードゲーム実装プロジェクト

  • 大学院研究員

後藤 歩
前⽥ 陽⼦
⻄中 潤
本丸 ⽣野
森永 康平
中原 薫
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 本地域は、海流の分水嶺地域にあることによる海民文化の特異な発展と栄枯盛衰の歴史を持っている。漁業、廻船/造船業や塩業の発達、潮待ち港の交易、沿岸特有の半農半漁形態などの他、中世村上海賊の活躍、遠方への出漁進出など、日本の歴史にも大きく関わっている。少子高齢化や過疎化は島嶼部が特に深刻である。地域活性化が急務であり、研究的価値の住民認知度を高めるなど、文化価値の創出からのアプローチがその方法の1つと考えている。本研究では地域住民への還元を持って帰結することを重視しており、それを構築するものとしてボードゲームを位置付けている。このゲームによって身体感覚、精神力、考動力、海への畏敬などを感じていただけるかどうかを検証する。2021年の修士研究「芸予の海民文化」において、造船、信仰、家船、製塩、多様性、観光という6つの海民由来の要素を抽出、文化資産として学術的に再評価しデザイン的利活用提案を行ってきた。ボードゲームは実装提案部分の共同研究成果物である。
 ボードゲームの先に目指すものは、深淵たる海民文化の継承とそれに伴う地域住民のシビックプライド醸成であり、研究者の介在により住民のメタ認知を促進できると考えている。これにより地域研究に取り組む⼈⼝が増え、定住者の増加に繋がる未来を期待する。ゲームの現物化における地元協⼒者や地元研究者との関係構築そのものが、歴史理解を深めると同時に我々の研究をも進める相乗効果があることについて、⼤きく期待している。
 効果測定の指標として、伊藤⾹織⽒の先⾏研究にある「都市と市⺠のコミュニケーション・ポイント」を使⽤する。具体的な観点は、①地域⽂化の受容と理解、②新たなアイデンティティ創造の2点とし、設置環境において2点が実現された状態かどうかを判断基準としたい。判断材料は協⼒先と企画に参加した地域住⺠へのアンケートとインタビュー結果を用い、定量・定性分析を行う。

研究活動と成果

<成果>
福武財団の助成プログラム
2023年度 助成事業「瀬戸内海地域振興助成(新規・チャレンジ助成)」採択決定

<研究活動>
【2022年】
6月
・助成応募先の調査/選定
7月
・キックオフ
・助成申請に向けた打ち合わせ
8月
・各タスクの進捗会議
・対象地域の協力先への提携交渉
・外部発注先への見積もり依頼
9月
・書類作成
・最終確認会議
・一次選考応募
12月
・一次選考結果発表/通過
・二次選考プレゼン資料作成
・最終確認会議

【2023年】
1月
・二次選考プレゼン会
・二次選考結果発表/通過、採択決定
2月
・対象地域の協力先への連絡
・役割分担/スケジュール決定のための会議
4月(予定)
・外部発注先との打ち合わせ

今後の研究活動

 2024年には獲得予算に応じた本格的な配布の⽅法を考える。2024年の検証結果を踏まえ、より効果的なゲーム設置環境を検討する。配布リストを作成し、予算に応じて順次配布する計画である。設置場所について、現時点ではカフェ、⼩学校、学童、地域博物館や交流施設を想定している。また、地域内外の⼈々がボードゲームで遊んだときにどのよう

に受容・理解するかどうかについても検証、研究に繋げる。2025年には、研究拠点となるWEBサイトを作成し、ブラウザ上で動かせるゲームや印刷して簡易的に遊べるゲームフォーマットを作成する。これは、対外的な発信拠点と位置づけられる展望的計画である。これ以降は、新たな地元賛同者を募り出資につなげることができれば、配布とWEBサイトの両輪で継続的組織体系を構築できると考える。地域活性学会などへの論⽂発表を視野に⼊れており、ここでも全国的周知に寄与できると考える。