kaleido days 角度を変えると見え方が変わる毎日に彩りを

  • 早川ゼミ

早川ゼミBチーム
谷山 実希
千葉 照子
中村 淳一
野田 望
廣門 和久
古澤 純
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1.研究背景と問題定義
自分らしく生きることは人生への満足感、主観的幸福感につながる。本研究では、自分らしくあるために、自分の良い部分にのみ目を向けるのではなく、悪いところも含めすべて認め受け容れる「自己受容」に着目し、自己受容を一段階上げる体験とは何かを明らかにするものである。ここでは、自己受容を「自己の否定的・肯定的側面の両方を、防衛的反応や過大評価を伴わず、ありのままに理解し、受け容れること」と定義した。
最初に、年代・性別による自己受容の状況や自己受容度の違いによる特徴を把握するために自己受容の実態調査を行った。笹川の自己受容尺度(図1)を用いた452名による定量調査結果(図2)と、日本の社会課題であるジェンダー・ギャップ指数が極端に低いことを考慮し、25-34歳女性をターゲットと定めた。

次に実施した自己受容の高い人を対象に実施したインタビュー調査結果も踏まえ、図3に示す8因子が自己受容向上に寄与すると仮定し、「自己受容を高めるきっかけとなる体験」をデザインすることとした。

2.体験のデザイン
自己受容を高めるために、自己受容が高い人を疑似体験し、反応的内省を促すツールとして、スマホ向けwebサービス「kaleido days」を開発することとした。
「kaleido days」で体験するアクティビティは、調査結果から得られた自己受容の高い女性の行動やターゲット層の興味関心を参考に設定し、自己受容向上因子との紐づけや重み付けにより設計した(図4)。また、アクティビティ終了ごとに実施するアンケートにより、反応的内省を促すプロセスを組み入れた。(解説動画:https://www.youtube.com/watch?v=dfbjTCGXwYk)。
開発したwebアプリを用いて先行検証を実施し、アクティビティ内容やユーザビリティなどの改良を行った。特に、アクティビティは、負荷の程度による完遂率と効果のバランスを保つことが重要であり、参加者の自己受容が低い場合、思考的内省を含むアクティビティでは否定的思考に陥る傾向があり逆効果であることが判明し、改良を加えた。

3.検証結果と今後の展望
検証の結果、「kaleido days」を完遂した34名のうち76%で自己受容度が上昇し、平均2.3ポイント上昇した(図5)。自己受容度の変化で分類したグループで分析した結果、10因子中4因子が自己受容向上と関係性が高く、自己受容度の変化に影響があった(図6)。
アクティビティ後のアンケートの定性分析では、デイヴィッド・コルブの「経験学習サイクルモデル」を参考に、アクティビティによる新たな経験を起点とした「気付き」から、思考の「変化」「行動改善」へとプロセスが進んでいるかを検証した。その結果、自己受容度が上昇した群では気付きの記述の出現率が64%と非常に高く、行動改善への経験学習サイクルが出現している様子が認められた(図7)。

「kaleido days」は、自己受容を高めるきっかけとなるwebサービスであることが実証され、仮説であった自己受容を高める因子のうち4つの寄与が明らかとなった。今後は、ユーザビリティをさらに考慮したアプリ開発やターゲットを拡げたアクティビティ開発を行っていく。