熱海交流風土記

  • 野村ゼミ

野村ゼミAチーム
石田 正明
大澤 香織
平田 美和
松山 洋平
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1.研究の概要・風土記の位置付け
 1200年以上の歴史あるまち―熱海。近世以降、国内有数の温泉地として発展してきた。しかし、観光産業への依存度が大きいためか、現在では移住者を中心に、日々の暮らしで「自分のまち」という意識をあまり持てていないという実情が見えてきた。当該地域にある人々の営みから育まれた文化資産を活かした「交流」の有り様にまなざしを注ぎ、移住者同士、移住者と地域の人との接点を増やし、自分のまちという意識を高めるきっかけとするべく、「熱海交流風土記」を位置付けた。


2.熱海交流風土記が目指したもの
 従来より地域活性化の文脈で使われる関係人口の概念においては、労働不足の解消や地域活動への関与度などの価値観で移住者を評価しがちな傾向があった。近年の多様な交流パターンが存在する時代におけるまちとの関わり方として、対象地域への移住を前提に考える人、あるいは暮らしのスタイルとして対象地域を利用する移動者のさまざまな動機に「柔軟に対応できる接点」を意識し、人とまち、人と人の関わりをデザインすることを目指した。


3.研究対象の地域設定
 710年(和銅3)に浜(お浜地)に御神体が漂着し、それを祀ったのが熱海の鎮守である来宮神社のはじまりとされ、お浜地跡から銀座通りを通り来宮神社へ至る道は、その「参道」であったと伝わる。時代の変遷のなかで、まちの中心軸が曖昧になってきたことを踏まえ、今改めて、この参道を核にした「交流の中心地」としての歴史が紡がれてきたまちの様相を研究すべく、研究対象の地域として設定した(図1)。


4.対象地域の交流の特徴と問題定義
 このエリアにおける交流の特徴として、3点が挙げられる(図2)。

 自分のまちと思えていない人たちが一定数存在することに着目し、これからの時代のコミュニティとして「多様な接点」をどのように作るかを「問い」として設定した(図3)。


5.文化資産の掘り下げ〜再統合・プロトタイプ
 本研究では、『記憶』『かたち』『海・海辺』『御鳳輦』という4つの切り口でこのエリアにおける文化資産の価値を見出した(図4)。

 再統合の過程で、対象エリアが有する機能をひとつの家として一元化した概念を作成したうえで、風土記としてのプロトタイプを制作した(図5)。


6.まとめ
 本研究では、移住者やこれから地域との関わりを持とうとする人の、まちの暮らしとの「接点の少なさ」が、まちへの想いの低さと相関することに着目した。接点を増やす方策として、エリア特有の地域・歴史的文脈から見出した4つのまなざしで、まちの文化資産たりうる価値とともに、当事者が柔軟に接点をつくれるプロトタイプを提案。今後はその価値検証に加え、行政のまなざしも視野に入れ、研究を昇華させる所存である。

研究エリアの外観を動画でご覧ください。>> https://youtu.be/0LvIv8kfC0o