心地の良い居場所生成に寄与するオンラインコミュニケーションの仕掛けに関する研究

  • 大学院研究員

山田 亜紀子

研究概要

 2021年度から2022年度にかけて「社会人のオンライン学習環境における心地の良い居場所を実現するためのツールの開発」と題した研究を行った。オンライン学習を行う社会人学生同士が学習目的以外で行うコミュニケーションに関して、非同期のコミュニケーションツール”ANKA-HOOK”による場の提供とプロトタイプテストを通じて入学間もない学生の反応特性や得られる効果について一定の見解を得た。
 プロトタイプテストや学会発表での様々な研究者との議論を経て、非同期だけにこだわらず同期コミュニケーションをハイブリッドで行うことによる効果増大の可能性と、オンラインホワイトボードを使ったコミュニケーションの可能性についてさらに探求していきたいと考えるに至った。2023年度はターゲットを社会人から拡大することも視野に、オンラインでの同期/非同期を使い分けた「描くこと」を取り入れたオンラインコミュニケーションの手法や効果について研究すべき領域があるのではないかとの仮説のもと研究活動を実施した。

 文献調査から、描くことによるコミュニケーションの研究について、まだまだ研究されていない領域があると考えられる。しかしながら描くことだけでのコミュニケーションはスキルがある程度必要で、特定の型のコミュニケーションを前提として検討を進めるべきであるとの結論に至った。
 また職場でのオンラインコミュニケーション観察により、グラフィカルなオンラインホワイトボードによる議論についてはいくつかの効用が得られるものの、議論に対する積極的モチベーションと2次元に広がった結果を読み取る力が問われること、雑談のようなチャットはほとんど活性化しないという結果が得られた。

今後の研究活動

今回の観察から研究の糸口をまだ見いだせていない状況である。しかしながらテレワーク環境でのコミュニケーションに起因する課題は多く、特に管理職や人事部門が円滑な業務運営や職場文化の醸成に悩んでいたり、静かにメンタルヘルスの課題を抱えていく若者が出現する現状がある。引き続き観察を進めてより一歩踏み込んだ課題を見出し、取り組み可能で意義のあるリサーチクエスチョンを定め、少しでもオンラインでの活動での悩みを減らし心地よく活動できる環境づくりに寄与する研究活動を進めていく。