地域の文化資産を活かした関係人口創出の試みー新潟県南魚沼市の多聞青年団を事例にー

  • 大学院研究員

高塚 苑美

研究概要

近年、地縁団体の衰退が進み、祭りや伝統行事の維持継承が危惧されている。本研究では、新潟県南魚沼市の毘沙門堂裸押合大祭(以下、大祭という)を担う浦佐多聞青年団(以下、多聞青年団という)を事例に、その価値を活かして関係人口の創出につなげる取り組みを試行した。

研究活動と成果

2023年3月 浦佐駅コンコースにてパネル展示、南魚沼市にて大祭関係者への研究報告会を実施、 2023年9月 地域活性学会 第15 回研究大会にて発表、2023年10月 IDS2期野村ゼミ研究員 研究シェア会にて発表、 2024年1月 南魚沼市にて若手事業者とのアイデアソンを実施

今後の研究活動

2024年度の研究は以下の通り。①研究テーマ「南魚沼市一村尾地区の太々御神楽の維持継承について」

② 研究の背景
2023年度は南魚沼市浦佐地区裸押合大祭の維持継承母体である浦佐多聞青年団を対象に、地域の文化資産を生かしたまちづくりの実践を行ってきた。当青年団の最も大きな課題は人員減少である。一方、隣接する一村尾地区の若宮八幡宮では宝暦年間から奉納されている太々御神楽があり、地域の小中高生が舞子の中心となって順調に世代交代および維持・継承が行われている。

③ 研究の目的
 本研究では、一村尾の太々御神楽がどのようにして維持・継承され、世代交代が促進されているのかを明らかにすることで、伝統的な祭祀の維持・継承に関する理論的枠組みを提供することを目指す。

④ 研究の対象と方法
本研究では次の3つの手法を用いる。

  1. 半構造化インタビュー:保存会、舞子(神楽を舞う者)、および地域住民を対象に、半構造化インタビューを行う。これらのインタビューでは、太々御神楽の価値、維持・継承のための取り組み、世代間での伝承方法、それらの課題に焦点を当てる。
  2. 文献調査:太々御神楽および同様の伝統的祭祀の維持・継承に関する既存の文献、報告書、地域の文化資料等を調査する。
  3. 観察:太々御神楽の練習や祭祀を観察し記録する。

⑤ 期待される成果
 本研究を通して期待される成果は次の3点である。

  1. 一村尾の太々御神楽の世代間伝承のメカニズムや地域社会における文化的アイデンティティの維持に関する理解が促進される。
  2. 地域内外で一村尾の太々御神楽への関心を高め、地域の文化資産の保存や維持・継承の重要性に関する認識が高まる。
  3. 若い世代への伝統文化の教育において、具体的な事例研究として役立つ。

これらを通して、本研究では一村尾の太々御神楽の維持・継承における過程を解明し、伝統的祭祀の世代間伝承の重要性を明らかにする。