旧友との再接続を促す行動介入のデザインと評価
- 社会デザインユニット
早川ゼミ 社会デザインユニット Hチーム
愛甲 香織
岡本 雄太郎
片岡 龍之
僧野 大介
三星 安澄
------------
1. 本研究の概要
孤独・孤立が社会問題として顕在化するなか、本研究は既存の関係資源である「旧友」 に着目し、旧友との再接続を促す5日間のワークを行うノート「I-NOTE(アイ・ノート)」 (以下、本ノート)を制作、本ノートを通じた行動介入の効果を検証した。筆記開 示法とノスタルジア効果を応用し、否定や評価を伴わない安全な内省体験を提供すること で、再接続の心理的ハードルの低下を狙った。
2. 研究の背景と目的
現代日本は社会構造の変化や生成AIの普及により人間関係が希薄化し、転機に「気軽に頼れる関係」が欠如する孤独・孤立の問題を抱えている。本研究はこの解決策として、新たな友人形成よりも時間的・心理的コストが低い「旧友との再接続」に着目した。再接続には独自の価値があるが、心理的障壁や支援策の不足から活用が進んでいない。そこで「旧友との再接続の障壁を乗り越えるためには、どのような行動デザインが可能か」を問いに掲げ、未利用資産である旧友へのアプローチ方法を模索した。

3. 行動介入のデザイン
本ノートはトランスセオリティカルモデル(TTM)を枠組みとして、A5 サイズ・28 頁の仕様で、周辺記憶から核心へと段階的に想起を深めることができる日々のワークから構成される。各日の最後にThree Good Things、学術コラムを載せ、Day5 の最後には「行動の最後の一押し」となる切手付きポストカードを添え、再接続を促す設計を行った。 ※試験版『I-NOTE』の構成はこちら https://x.gd/qguOR

4. 介入方法と測定
機縁法により、20 代から70 代の男女(実験1:N=64)、ならびに、高齢者施設職員とその知人から参加者を募った(実験2:N=14)。効果測定として、社会的自己効力感(PSSE:Perceived Social Self-Efficacy)の測定を介入の前後で行った。また、質的調査も実施した。
5. 行動介入の結果
全体の23% が旧友との再接続行動に至った(表1)。連絡手段としてはLINE などスマートフォンからメッセージを送る方法が最多であった。 実験1 でPSSEが有意に上昇した(表2)。実験2 でも同様の傾向が見られた。なお、PSSE の上昇と再接続行動の相関は認められなかった。 また、再接続行動に至らなかった人の方がPSSEが上昇していた(表3)。さらに、本ノートを実施した78%の人が旧友の捉え方に変化があったと回答(表4)。多くが旧友との関係性を肯定的に捉え直しており、旧友の価値を再認識したことがアンケート調査から伺われた。 インタビュー調査では、自分の感情や価値観を改めて整理する契機となった様子が言葉に表れており、本ノートが過去の人間関係に対する感情や意味づけの変化を与えたと考えられる。また、旧友との再接続に向けた直接的なきっかけというよりも、その前段階としての心理的な準備を整える体験として受け止められていることも示唆された。 他方、被験者の17% に心理的負担(ネガティブな過去の想起など)が生じていた。

6. 結論
本ノートは即時に再接続を強いる介入ではなく、再接続を選択肢として再認識させる 「静かな後押し」として機能した。対人行動全般に関する自己効力感の改善を通じ、旧友 への向き合い方と再接続行動への準備性に影響を与え、一定割合で実際の行動に発展した。