新規行動へのためらいを生む不安の可視化ワークの設計と評価

  • 社会デザインユニット

早川ゼミ 社会デザインユニット Eチーム
竹本 皓祐
近藤 祥文
千葉 一平
帯川 里美
増田 愛理
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1. リサーチクエスチョン  

内発的動機に基づく新たな体験は、個人の価値観の形成及びwell-beingに重要な役割を果たす。しかし主観的なリソースの不⾜や、成果が不確実な活動や習得に時間を要する活動を避ける姿勢により、多くの⼈が新たな⾏動・体験に踏み出せていない可能性が指摘されている。そして、その具体的な要因が既存調査で明らかにされているとはいい難い(図1)。

そこで、リサーチクエスチョンを「内発的動機に基づく新たな体験へ踏み出す際の促進要因及び阻害要因は何か?」とした。

2. 調査・共感・洞察  

「興味・関⼼に基づき新たに⾏動・体験したこと」について、アンケート調査(165名)及びインタビュー調査(19名)を実施し、⾏動変容の段階を表すTranstheoretical Model (TTM)と、⾏動変容に関わる要因を整理したCOM-Bモデルを用いて分析した。その結果、新たな行動・体験へ踏み出すことはTTMにおける関心期からの進行と捉えられ、促進要因としては社会的機会が、阻害要因としては物理的機会の不⾜と「漠然とした不安」による心理的能力の不足が確認された。さらに、漠然とした不安は、「自己効力感の不足」「スポットライト効果」「不確実性への不耐性」「損失回避」の4つに分類された(図2)。

3. 問題定義  

社会的機会・物理的機会は、他者からの支援などの外部環境に依存する。しかし、漠然とした不安を軽減・変容させるアプローチは、外部環境に依存せず、本⼈の対処によって行動変容を起こしうる⼿段と考え、問題定義を「漠然とした不安と向き合い、新規⾏動を促すデザインとは?」と設定した。

4. 創造・視覚化  

TTMの関心期以降への進行を促すには、漠然とした不安を具体化・可視化し認知的・感情的な再評価を行うことが有効と考えた。そこで、プロトタイプとして「ON YOUR MARK, -⾏動のきっかけを⾒つめるワーク-」を設計した(図3・図4)。

【構成要素】

●漠然とした不安の具体化・可視化:不安の4分類に対応する設問に回答する

●⼿書き:タイピングと比べ深い理解を促す

●物語様式:ストーリーによって不安の客観視と再定義を行い、意味を⾒出す

5. 効果検証  

50名にプロトタイプを配布し、効果検証のためのアンケートをワーク実施直後及び1週間後の2回実施した。  有効回答数33名のうち13名(39.4%)に、TTMステージの進行を確認した。また、「やりたくてもできていないこと」の実⾏に向けた確信度も、ワーク実施前に比べて向上した(図5)。

さらに、漠然とした不安の具体化・可視化、手書き、物語様式も不安の軽減に効果があった(図6)。

6. 結論・展望

漠然とした不安を具体化するワークは、新規行動に対するTTMステージを進行させ、確信度を高めた。不安の可視化に物語化を組み合わせた本アプローチは、新規行動を促す有効な仕組みであり、既存研究にはない独自性を有する。

 今回の効果検証は規模や期間が限定的であり、社会実装には更なる検証が必要である。また、準備期から実行期への移行を支援する追加ワークの開発など、研究発展の余地を残す。