就職活動生の内省を促す対話カードの開発
- 早川ゼミ
早川ゼミDチーム
臼井 真由美
瀬戸 亜美
奥井 伸輔
青山 春華
三國 信夫
日本では若者の入社後3年以内での早期離職が社会問題となっており、原因の一つに就職決定時に内定先に満足できていない「不本意就職」がある(石黒, 2017)。我々の調査結果より、不本意就職群は本位就職群に比べて内省が少ないが、現在の就職活動プロセスに就職活動生が内省するステップは組み込まれていないことがわかった。また、就職活動生は就職活動のことを誰かに話したいが、本音を話す機会がないことがわかった。そこで本研究では大卒者の不本意就職を減らすことを期待して、就職活動生の内省を促す対話カードの開発を行った。
対話カードのコンセプトは「就職活動生が話し手となり、自らの活動について他者にとことん話せて、内省につながる」とした。教師のための実践的な経験学習モデルであるALACTモデル(コルトハーヘン Korthagen, 1985)を対話カードの土台に採用し、就職活動生が取り組みやすいよう調整した(図1)。対話は①話したい就職活動中の行動・出来事を選ぶ、②その時の感情を話す、③行動・感情を掘り下げる、④客観視し気付きを探る、⑤次にとる行動を考える、という5ステップで構成される(図2)。先のインタビュー調査で得た就職活動生の行動・出来事・感情に関する言葉を抽出分類し50枚のカードとし、①②で就職活動生はこのカードを手掛かりに話す。
就職活動生を対象に研究メンバーが聴き手となり、対話カードの効果を検証した。とことん話すことを促す効果を被験者事後アンケートから、内省を促す効果を発話分析から検証した。結果、とことん話すを促す効果、内省を促す効果ともに90%以上の学生で確認され、対話カードの有効性が示された(図3)。
本研究では、聴き手に関する観察・検証は行っていない。今後の展望として、誰が聴き手となるか、良い聴き手になるために何が必要かを検討する必要がある。例えば、大学教員・キャリアセンター職員が聴き手となれば就職活動プロセスへの定着が、また就職活動生が聴き手となれば自分の就職活動への気づきの獲得が、考えられる。以上を踏まえ対話カードの改良を行っていきたい。