対話型鑑賞×医学教育への可能性について(レポート)

一般公開

2019年から開始している授業レポートです。
京都芸術大学アートコミュニケーションセンター アーカイブ でも公開頂いています。
2022年からは宇都宮美術館様と連携した授業にアップデートしました!

↓ 以下、レポート本文です ↓

授業開催日:2019 年 8 月 28 日〜10 月 24 日 <週毎に 60 分×8 コマ実施>総合診療科 助教 森永康平

 言語技術や感性・美意識を伸ばす教育方法はないものか考えあぐね、また実行にも二の足を踏んでいた私は「対話型鑑賞」というキーワードから ACOP の活動を知り、その活動に触れたことで 2019 年 8 月から 10 月末まで、獨協医科大学の医学部 1 学生を対象にした「名画で鍛える診療のエッセンス」の開講を実現出来た。このレポートで①講義の開催までの経緯、②講座実施による気づき、③今後の展望の主に 3 点についてまとめて述べたいと思う。

①  講義の開催までの経緯(講座への対話型鑑賞の導入経緯について)

 大学病院で総合診療科医師として勤務する中で、医学生や研修医の医学的な知識とは別に圧倒的な「観る」時間の不足、(考えながら)「聞く」「話す」言語能力に着目し、その教育手法を模索していた。

・ちょっとした言葉、表情、目線の動きの観察、そこから、感覚的に感情の機微までも察知し、踏み込んだ質問で、問診票にあるものとは異なった真の問題点を抽出すること。

・入院中、ベッド脇にある本や写真から趣味や生きがい・家族関係・モチベーションを想像しリハビリのプログラムを考案すること。

ベテランと呼ばれる医師たちは当然のように行っていることであるが、「自分がどう考えるか」「相手の年齢や認知機能・社会背景に合わせ、どのように言葉を選び情報を引き出すか」「複雑多様な心理・社会的困難な因子で構成された問題をどう解決するか」…。これらは、言語化や一般化が困難なこともあり、学ぶ機会が限られてきた。「現場で働けばわかる」という扱いを受け、問題が隅に追いやられてきた印象がある。

 だが近年では、「対話型鑑賞」という、思考能力、対話力の向上を目的として実施される美術作品の鑑賞方法が話題となっていると耳にした。

 自分で検索する範囲では、国内の医学部教育で対話型鑑賞を取り入れたり、またその効果を報告した前例はない。もしも導入されれば臨床医となった際に非常に重要となる、言語能

力や感性、想像力の発育に大きく寄与出来るのでは?という仮説をもった。

 だが私自身、近年で少し美術館に行く頻度が増えたくらいで、実際に開催されている対話型鑑賞に一度も参加したことがなかった。書籍等のみを参考に講義やワークを行うのは甚だ無謀に感じられたので、国内で先進的に「対話型鑑賞」を開催している団体や組織はあるのだろうか、なるべく、活動の理念が定まっており実績も豊富にある組織がないか、という視点で検索を行った。

 そこで発見したのが京都芸術大学(旧:京都造形芸術大学)アート・コミュニケーション研究センターによる Art Communication Project(https://www.acop.jp/ 以下 ACOP)である。ホームページによれば、学校・美術館などの様々な分野で対話型鑑賞を展開しており、活動報告も頻繁に行われている。「みる・考える・話す・聴く」の 4 つを基本とした対話型鑑賞プログラムで、美術史等の知識だけに偏らず、鑑賞者同士のコミュニケーションを通して、美術作品を読み解いていく鑑賞方法を提唱しているとのことだ。

 俄然活動と ACOP で行われている対話型鑑賞に興味が高まり、唐突だとは思いつつも、サイト内の『Contact』より思いのたけをぶつけたのが一歩目だった。そこから先は同研究員の三重野様に丁寧に前述の状況や今後の展望に関してメールや電話にてカウンセリング頂き、質問や相談に明確な回答を頂いた。その中で印象的だったことの一つとして、進行の手法がある。対話型鑑賞は国内でも様々な組織が扱っているが、ACOP の特徴として、「ナビゲイター」と呼ばれる人が対話の「交通整理役」を担うという。作品と鑑賞者・鑑賞者同士の会話の流れを整理し、ときにはトスをあげて促したり、球拾いをしたりしながら、会話でのコミュニケーションをより活発に、そして深いものにするとのことだ。ナビゲイターは、話し合いのなかで「受け答え/コメント」「言い換え/パラフレイズ」「結びつけ/コネクト」

「情報提供/インフォメーション」「まとめ/サマライズ」を駆使しながら対話型鑑賞を行うという。そしてナビゲイターとなるためにアート・コミュニケーション研究センターでは膨大な時間と労力をかけて、スタッフによる学生に対する学習や、ファシリテーション指導が行われるという。

 自分の中でも(特に対話慣れしていない参加者が多い場合)ただ闇雲に決められた質問を繰り返すだけで本当にうまくいくだろうか、ファシリテーション技術も学習したい、という欲求があったので正に渡りに船の情報であった。

 そして教員を対象にした 2 泊 3 日の「教員免許状更新講習 2019『コミュニケーション・スキルアップの 3 日間!』」に非教員ながら参加させていただく運びとなった。これから開催していく講座に活かしていけるよう、三日間一秒も無駄にすることがないよう覚悟を決めて京都に足を踏み出した。

 「教員免許状更新講習 2019『コミュニケーション・スキルアップの 3 日間!』」は全日を通して様々な形式で実施される。ワークショップ・レクチャー・ディスカッションを通し

て、コミュニケーションスキルを問い直す。自分の感性が刺激されっぱなしであった。

https://acop.jp/images/2019/09/b3ee31864f2cbe61cd4ef30a8378fad3.pdf り)

 「鏡を見ながら逆さまの世界を歩く」、 目隠しをした相手に作品について伝える「ブラインドトーク」のワークショップは、「他者へ的確に情報を伝えるには、自分の視点だけではなく、他者の視点をも観察し想定した上でなければ伝わらない」という、本質的な学びを、楽みつつ会得することが出来た。グループワーク「マンガ読解」は、2 時間かけて数ページの漫画を徹底的に読み込み、考察するワークである。シンプルな絵柄の正直言えば普段なら読まない、もしくは読み飛ばしていたであろう種類の漫画に、こんなにも深い物語と解釈の可能性が込められていたのかと、今まで読んできた漫画を全て読み返したくなるような衝動に駆られるものであった。

 2 日目には福のり子先生による「『みる』ことからはじまる『発見』&『コミュニケーション』」のレクチャーを受けることが出来た。流れるような関西弁の感性と論理の絶妙なバランスで融合したトークで自然と会場が和み、発言も生まれてくる。題材はなんの変哲もない一つの赤い石。さらに会場と対話しながら生まれる新たな解釈、ストーリー。型や決まりごとに縛られない、これまでの人生で経験したこと、感じたことの一端が伝わってくる珠玉のレクチャーであった。現在に至るまで自分の目指す対話型鑑賞の一つの完成形・ロールモデルとなっている。

 福先生のレクチャーでは【対話型作品鑑賞を経験することで起こる思考力の変化】を6つ

提示頂いた。私が医学教育でトレーニングしたい項目をことごとく満たしている。

フィリップ・ヤノウィン著『どこからそう思う?学力をのばす美術鑑賞 ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ』2015,
淡交社 より抜粋・要約

 

 患者さんを十分観察せずに PC とにらめっこになっている学生や研修医があまりにも多い。こんなにも大事な情報があるのに!と歯痒い思いである。観察しないのは、観ることで得られる情報に重きを置いていないからだ。話を聞けないのは頭の中で思考出来ていないからだ。

 対話型鑑賞では「人によって様々な視点がある」という当たり前の真実に触れることが出来る。作品を通じてぶつけあう、それぞれの発言は実は価値観、考え方などその人自身と言っても過言ではないものと触れることが出来る。医療現場の中というのは学生の頃からやや閉鎖的で特殊な環境、狭い人間関係等でどうしても視野が狭くなりがちだ。その結果、医療者-患者間での使用する言葉や価値観がずれ、悲しい誤解が生じることはよく経験することである。  もしも学生が、対話型作品鑑賞で「観ること」「考えること」をトレーニングし、多様な価値観を受け入れるキャパシティーを持ち、一方的でないコミュニケーションをしながらゴールを探していけるようになり、そのような医師が増えたらどんなによいだろう!?と胸が熱くなった。

 また 3 日目は対話型鑑賞を応用した、芸術作品だけにこだわらない、実践的で多様なワークショップを体験出来た。理科への応用として実施した「貝体新書-おとなが学ぶ二枚貝 -」。貝合せで使用するハマグリの貝殻を手にとって入念に観察し、対話を通じて合意形成を行い、事実に迫っていくという内容である。また地理・歴史学分野では古地図を題材としたワークショップが行われた。地図に記載された文字、イラストから描かれた歴史、意図、場

所を特定していく。いずれも知的好奇心をくすぐる刺激的な時間を送ることが出来た。

 対話型の授業については、鈴木有紀著『教えない授業―美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方』(2019, 英治出版)でも述べられており分野や対象を問わず様々な応用性があるようだ。実は私もかねてより症例をベースにしたカンファレンスを一年以上行ってきた。今になって考えると「対話型カンファレンス」「教えないカンファレンス」とネーミング出来るかもしれない。知識を一方的に提示するスタイルでなく「自分だったらどんなことを聞く?」「それは何を考えて聞くの?」などと普段では突っ込まないところまでしつこく、聞きながら進行していく。この手法でやると一見進捗がすごく遅くなるような印象になるが、学生それぞれが当事者となるのでカンファレンスへの身の乗り出し方や真剣味変わってくる印象だ。教える側としての緊張感もより高くなるが、向き合っている達成感も強い。

対話型鑑賞でファシリテーション力を訓練すれば、このカンファレンスにもすぐに応用できる期待をもった。

 創意と工夫が散りばめられた 3 日間のプログラムを堪能し、自身でも授業を組み上げたい、という決意は改めて強固なものとなった。最終日の振り返りにおいては、定期的にスタ

ッフの皆様へ活動の進捗を報告します、と宣言し、3 日間の体験の幕は閉じた。

② 講座実施による気づき(課題や反省点も含めて)

 前述の「教員免許状更新講習 2019『コミュニケーション・スキルアップの 3 日間!』」を振り返り、改めて講義内容を修正・改善しながら 8 月 24 日から 10 月 28 日まで、獨協医科大学医学部1年生を対象にしたリベラルスタディ「名画で鍛える診療のエッセンス」を開講した。

プログラム(医学部1年生 6 名)

 #1 ガイダンス・プレテスト

 #2 言語技術(曖昧な情報の察知、聞く技術)

 #3 言語技術(伝える技術)

 #4 表情を見逃さない

 #5 物語の構造

 #6 デザイン思考

 #7 ネガティブケイパビリティ

 #8 まとめ・ポストテスト・アンケート

 言語技術的な授業等の報告は割愛するが、セミナーで経験した対話型鑑賞、ブラインドトークについては試験的に実施した際の学生の反応が非常に良かったこともあり、途中からそのままレギュラーメニューとした。また低学年に合わせて症例をベースにした対話型カンファレンスも実施した。

 当初は学生からの発言がうまくでない、ファシリテーションがうまく行かないことに歯がゆさを感じることもあったが、メンバーの個性や能力等を考慮したり、司会からの質問を増やしたりと進行を工夫したことや参加学生の慣れもあり、回を重ねるごとに円滑に進んだ印象がある。また、将来的なプレゼンテーションに必要な考え方として、情報を 2 つの軸(事実/解釈、大枠/詳細)のどこに位置するのか、各講義で意識する手法を考案し、学生により強調して伝えるようにした。

 以下は幾つかのトピックを抜粋し、岡崎大輔先生に頂いたコメントも交え振り返っていく。

* 彫刻を使用した対話型鑑賞

「教員免許状更新講習 2019『コミュニケーション・スキルアップの 3 日間!』」で私自身も鑑賞した彫刻作品を、今回の講義でも使用した。彫刻作品に対する解釈として「農民」にみえる、「王様」のようだ、など対立的な意見が出たり、当時自分達が考えたものと同じ

意見が学生から出たりと、ファシリテーターをしていても非常に楽しい時間となった。

* 対話型鑑賞の経時的な変化

経時的な気付きとして、当初は学生も「何を喋ればいいのだろうか」「これはわざわざ言ってもよいのだろうか」という不安から発言が少なく途切れることも多かった。だが徐々にそういった誤解もとけ、メンバー同士への慣れも出てきたのか遠慮もなくなり、それほどの促しがなくとも対話が生まれる傾向になった。

* 毎講義開始時のアイスブレイク(ブラインドトーク)  第 3 回以降、セミナーで体験したアイスブレイクとしてブラインドトークを用いた(当初は第3回のみの予定であったが学生の反応がよく対話も活発になったので急遽続行となった)。あまり毎講義の最初にアイスブレイクをする、という意識はしていなかったが、今後はブラインドトークだけでなく前回の講義の気づきを思考化、言語化し発表し共有する時間が必要かもしれない。

* ホームワークの設定  この各講座間には、1週間ほどの間隔が存在する。より確実に定着させていく、という意味では前回の講義内容の確認等も含めたホームワークを設定しても善いかも知れないと感じた。

* ホームワーク課題例(1 週間で可能なものを想定):

・自分が見つけたニュース等を一つ選択・印刷し、事実と解釈を色で塗り分ける。

・授業終了時に作品名や作者などの情報なしで作品のみを提示し、みていない人にわかるよう文章化する。

・好きな漫画、映画、小説を物語の構造に沿ってまとめて文章化、次回の授業で皆の前で話す。

* 曖昧な言葉に敏感になること。事実なのか解釈なのかを区別して考えること。

 これは、講座全体を通じて対話をする中で重点的に指導した内容である。なぜなら、事実と解釈を区別しながら物事を見ていくときの順序や、言及の不足している箇所を明確化することで、言語化のトレーニングとして有効だと感じる。授業の際に、学生が同じ言葉を使っていても後からそれぞれ異なる想像をしていたと表情等で察知できた場面があったが、私が気づくのが遅く、十分にそれぞれの発言の背景を探り、広げられないこともあった。実感を伴った指導介入や話題を展開させる絶好のタイミングなので生徒観察には注意を払いたい。また、相手と自分の言葉のすり合わせを自発的に行うような環境(ワークショップ)づくりをしたいと思った。

* 診療を意識したテーマ設定、題材の使用など

 「#5 物語の構造」の講座など、今回は一般的によく知られている昔話等を使用してのワークショップを行った。物語は知識を後世に伝達する方法として、長い年月をかけて洗練された言語記憶装置である。背景や状況設定の説明、事件の発生など「物語の構造」を理解し、論理的な一連の流れとして言語化出来ることで、将来のプレゼンテーションや上級医の相談、専門家へのコンサルトに有用に働くのでは、という狙いである。高学年を対象にする場合等はより実際の患者さんの症例や病院でのシチュエーション(看護師さんとのやり取り等)を使用しての対話型教育を施行すれば、診療能力の向上に直結するとも考えられる。

* デザイン思考 “診療をデザインする“という考え方  ハッソ・プラットナー教授が提唱する『デザイン思考の 5 段階』という思考モデルでは、

Step1 として徹底的な共感とユーザーの理解がある。

 徹底的な観察と対話(インタビュー)を重ねることによって、ユーザーに共感し真のニーズ(課題)を明らかにするという思考プロセスは、理想的な診療姿勢の基本として共通するものが多く、また望ましいと考え、講座にて概要の紹介を行った。

また、岡崎先生からの授業後のアドバイスで、デザイン思考だけでなくアクションラーニングと呼ばれる手法から生まれた「質問会議」の存在を教わった。

参加者らが意見を言い合うのではなく、問題提示者が提示した問題に関する質問とそれに対する応答のみでやりとりを進め、「意見を言わずに」問題の解決策を探っていく会議術である。医療の世界でも建前や理論的には正しくても、「絵に描いた餅」になってしまうことは多々あるが、それは押しつけ感ややらされ感から、現場での実行につながりにくいからだ。質問会議のルールでは、問題提示者は解決したい問題の内容を簡潔に説明するのみで、後は質問に対する回答のみを行う。それにより、参加者の当事者意識が増し、気付きと納得感から行動に繋がりやすいと注目されており、医療現場でも会議や多職種コミュニケーションなど様々な現場で活用可能でないかと考えられる。

* ネガティブケイパビリティ  ネガティブケイパビリティについて簡単に解説しておくと、「答えの出ないあやふやな事態に耐える力」などが言葉の例として言われている。世の中には「なぜ」や「どうして」が明確に断定できる状態は非常に少ないが、医療は正にそれが該当する分野である。限られた時間や情報で無理くり、「いびつな」結論を出さないといけないギスギスした空気感はますます拡大しており、今後の必要な考え方だと感じている概念である。

 ネガティブケイパビリティについて扱ったのは、関東に前例のない大型台風が襲来し、各地で大きな被害を出した直後のレクチャーであった。「結論など出さずに、ただ立ち続けるだけで価値がある」という考え方には大きな可能性と希望があるのではないだろうか。震災後の被災地の写真を使用し、場所や状況を考察する対話型鑑賞を行ったが、やはり実感が湧くのか、内容の理解や議論がよりスムーズに進んでいた。ここでもまた、題材選びの重要性を感じた。

 該当回は学生というより、むしろ途中から毎回視聴しに来てくださった秘書に大反響だったのが印象的だった。

* 8 回の講義を終えて  知識偏重な内容で質問・意見を述べさせない、一方的な進行にすることは簡単であり、授業計画も立てやすく、見かけ上の体裁も整っているように見える。だが理解度にばらつきが出るほか、置いてけぼりとなる生徒も出やすい。一方、生徒の表情、一挙一投足も見逃さないよう対話しつつ行う授業は、学生と一緒に緊張したり、楽しみながら本質を検索し、時には「これでいいのか?」と思考や議論をフリーズしながらでも、両者の間に一体感が生まれる。これにより得られるものはかけがえがない。回を経るごとに参加学生の発言は慎重でありながらより深く、鋭く、創造的に洗練されていき、まさに成長の瞬間に立ち会えた実感があり、授業を振り返って、これほど生徒の顔が鮮明に浮かんでくるのは初めての経験だ。これは普段の学生・研修医教育では味わえなかった体験だ。授業を終えた今、言語教育の重要性と「対話型鑑賞」を取り入れた教育手法の効果を、こういった形で体感出来たことは幸せな体験であったと考えている。

* 事後アンケート結果 

*アンケート所感:

・全体評価は 5 点満点で 4.83 点と満足頂けた結果となった。

・講義中の反応とアンケートでの意見は必ずしも一致しないものだという驚きがあった。

・生活や学業において少なからず実感はあるようである。

・自由記入欄には講座で得た学びを生かして、根拠や理由を基に感想を記入してもらうとよりトレーニングになるかもしれない。*オブザーバーお二人(当科の秘書)からのコメント(一部抜粋)

  • 様)新しい分野の講義を拝聴でき、自分の中で、もっと知りたいと感じたり、まさかこうくるとは…等々たくさんの発見をさせていただきました。絵が好きなだけでも、楽しむこともでき、そして、自分もまだ成長できるかも…と思ってしまうほど、人間力あふれる講義に心から感謝しております。学生さんは、将来、医師としてだけでなく、これからの仲間、社会における貴重な能力を鍛えられる機会が与えられたのではないか…とも思いました。語りだすと長くなりそうですので、これだけは聞いていただこうと思いますのは、8 回の講義を経て、みんなが、個性それぞれに、かなりプラスに成長していると…強く感じております。例をあげれば、自分を達観視しすぎて、誤解を招いてしまいそうな学生さんも、回を重ねるごとに、聞き手にわかりやすく、なんだか、話し方まで、まるく温かな感じにとれたく

らいです。教育、教養ってすごい力を持つのだ!と思わずにはいられません。

  • 様)絵画を楽しむ!まさに、タイトル通りに、今までとは全く違う見方、考え方、楽しみ方を知ることが出来ました。【鑑賞する】という定義が、絵に描かれた背景を知識として習得している事だけではなく、違った部分からアプローチしてみることで見えてくる新たな発見が、立派な鑑賞であり、感じ方、楽しみ方である事を学び、さらに沢山の気づき、がありました。講義を受ける生徒たちが回を増すごとに笑顔になり、会話が弾む様子は見ていて、頼もしさと将来への期待を感じました。

 絵画を通して広い視野と価値観を学んでいくことで、さまざまな分野において社会の担い手として広く貢献していけると確信致しました。素晴らしい講義をありがとうございました‼︎

③ 今後の展望  今回の講座で歩みを止めず、より沢山の医学生が得るものの多い授業を提供出来るように今後も試行錯誤を重ねていきたいと思う。今後もアート・コミュニケーション研究センタ

ーとの連携を続けさせていただきたく、主に下記3つの視点で自分の展望をまとめた。

  • 授業の拡大・認知度の向上
  • 授業内容のブラッシュアップ(対象の拡大とそれに合わせた内容の調整)
  • 対話型鑑賞の診療力や感性、コミュニケーション力の醸成への寄与研究と論文作成

是非今後、アート・コミュニケーション研究センターの活動で勉強させて頂き、また研究員の皆様のお力をお借りしたいと考えている。

最後に

 医療や医学教育への対話型鑑賞の応用が潤滑に進み、効果を生み出すことになれば、もはやより構成人数の多い看護、薬学、検査部門の教育機関でのニーズも必然的に拡大していくだろう。そうなれば、医療分野での対話型鑑賞教育の評価と立ち位置はより強固なものになるのではないか。言語力やコミュニケーション能力を高めた医療者が紡ぎ出す医療はきっと、確かな根拠に基づき科学的でありながらも、患者さんへの眼差しと対話で得られた情報を重んじる豊かで慈愛に満ちたものになると考えている。

謝礼

 ここまで来るためにアート・コミュニケーション研究センターの皆様には非常にお世話になり感謝の言葉もありません。8 月のセミナーなくして、講座開講は実現できませんでした。また特に私の拙い講義動画と授業資料の pdf 全てに目を通しなおかつ的確で、細をうがったアドバイスを頂いた岡崎大輔先生、改めまして本当にありがとうございました。