記憶資産とエコミュージアムに関する考察

  • 大学院研究員

中原 薫

研究概要

2023年度日本エコミュージアム研究会研究大会発表要旨
(2023/07/22 於:法政大学市ヶ谷キャンパス)
題目:パブリックアートとエコミュージアム
―タイムストーンズ400再創造プロジェクトを中心に
要旨:
大阪市東淀川区JR新大阪駅1F駐車場に位置する今井祝雄作『タイムストーンズ400』は、「大大阪の21世紀計画」と「大阪城築城400年祭」にちなみ大阪北ライオンズクラブが建立者となったパブリックアートである。制作は日本の現代美術を代表する具体美術協会元会員の今井祝雄、施工乃村工藝社により1982年(昭和57年)に完成した。地域社会に奉仕することがモットーだったため『タイムストーンズ400』は当時の国鉄に寄贈された。しかし新大阪駅のある国鉄はJR西日本とJR東海となり、当初設置された土地はJR西日本から大阪市へ等価交換されたため管理者が不明の状態が続いている。令和3年度文化庁「大学における文化芸術推進事業」大阪大学大学院人文学研究科アーツ・プラクシス人材育成プログラムにおいて展覧会・トークイベント・シンポジウムを実施した。プロジェクトの実践結果を報告するとともに、パブリックアートのエコミュージアム化への課題を検討した。

研究活動と成果

学会報告:2023年7月22日(於:法政大学市ヶ谷キャンパス)
日本エコミュージアム研究会令和5年度研究大会
題目:パブリックアートとエコミュージアムータイムストーンズ400再創造プロジェクトを中心に
※エコミュージアム研究第29号掲載(2024年3月31日発行)

今後の研究活動

2024年度研究計画
1.研究テーマ
パーソナル・エコミュージアム研究
修士研究テーマだった「芸予諸島の海民文化―記憶資産とエコミュージアムに関する考察」で論述したパーソナル・エコミュージアムという概念をどうすれば活用できるかの考察。
2.研究目的
時代の変遷とともに変わりつつある地域博物館の役割を原点から見直し、インターネットが普及した現代にパーソナル・エコミュージアムという視点から見直しを図る。
3.研究の背景
2022年度の日本エコミュージアム研究会発表ではパーソナル・エコミュージアムとウェルビーイングの関係についてのご指摘をいただいた。2023年度の同研究会発表では、パブリックアートのエコミュージアム化についてのご指摘をいただいた。愛媛県今治市と大阪府大阪市のエコミュージアム化取組事例発表を踏まえ、地域博物館のパーソナル・エコミュージアム化という視点の重要性を認識出来たため、理論化を図りたい。
4.研究で採用する方法
⑴先行研究調査
・日本エコミュージアム研究会会報で発表された地域研究
・フェリックス・ガタリ『三つのエコロジー』(平凡社選書)1993
⑵聞き取り調査
・美術家今井祝雄
・大阪アーツカウンシル
⑶学会報告
・文化と地域デザイン学会(2024年5月18日)
・日本エコミュージアム研究会(2024年7月)
5.研究の結果から予想される成果
 今後地域博物館に関わる人々との活動連携
6.研究の特徴と先行研究例
 日本国内のエコミュージアムは地域研究の場所としてのみ認識されてきたが、発祥であるフランスでは環境・社会・精神という視点から語られている。パーソナル・エコミュージアムの理論化により、エコミュージアム研究の深化を図ることが出来ると思料する。先行研究としては、日本エコミュージアム研究会会報で報告された各地の実践例を参照する。