遊びごころを共有するための コミュニケーションデザイン

  • 大学院研究員

玉木 愛実
井村 理絵
吉田 圭介

研究概要

遊びごころを持つことは幸せにつながるという仮説のもと、修士研究では遊びごころと幸福
度のアンケート調査から、遊びごころ尺度(宮戸、2014)の一つ「物事を楽しもうとする姿勢」と、幸福尺度(前野、2013)の一つ「つながりと感謝を示すありがとう因子」の間に正の相関を見出し、多くの人が初対面の場で遊びごころを発揮しづらいと考えていることを明らかにした。またヒアリング調査では両尺度の高い人ほど他者のために遊びごころを発揮する傾向があることが分かった。以上の結果より、「遊びごころを他者と共有すること」が「良い人間関係につながり」、「人々の幸福度が高まる」のではないかと考え、遊びごころを共有するコミュニケーション方法としての手みやげを開発した。手みやげを渡す際に言う「つまらないものですが…」の決まり文句を逆手に取り、相手への想いを遊びごころで表現する「つ〇(つまる)」ブランドとして考案し、プロトタイプを製作。プロトタイプを受け取った 9 割以上の人がこのような手みやげをもって誰かに会いに行きたいと回答。

2023 年度は、「つ〇(つまる)」ブランドの社会実装を目指し、中山間地域にある県立高校で、地域活動を主として行う部活動に所属する高校生に協力を依頼し、実証実験を実施した。同部活動は、農業体験や地域活動などを通じて地域の大人との関係構築や地域の課題解決を目指す一方、実態としては関係構築ができている大人層が限定的で、地域内での部活動自体の認知度も低く、活動の広がりを持ちにくい現状(課題)を持っていた。この課題に対し遊びごころを用いて、人間関係の構築をすることができるかを検証するため、高校生が地域の大人に会いに行く際に「つ〇(つまる)」ブランドの手みやげを活用してもらった。

結果、事前、事後のアンケートと、実験に参加した部員 10 名は、「つ〇(つまる)」ブラ
ンドは、地元の大人(初対面)との関係づくりのきっかけとして機能したと評価した。一方で、その後の関係の継続にはつながらないという課題を残す結果となった。

今後の研究活動

2024 年度は、人間関係を構築するきっかけとしての「つ〇(つまる)」の性質を認めながらも、その関係を継続させるための要素を調査研究し、「行為の芸術活動」としての活動も行う。そのために、これまでの研究をウェブサイト上にまとめ、多様な主体が関わることができる活動生態系を構築する。また、今までの研究内容をデザイン学会にて発表予定。