- 大学院研究員
氏家 士富子
研究題目
(1)『横浜中華街の風土記』(2022年度修士課程グループ研究)から派生した「ピンクの語り」(個人研究タイトル「中華街のひとびとの『なつかしさ』の語り コロナ3年目に聴いて100年後に語り継ぐ」)の発表・公開
(2)公衆衛生を、従来の視点に加えて地域・都市の社会学の観点からより多角的に認識し、多様化・複雑化する時代における公衆衛生を自分ゴト化し、住民「と」語る、住民「として」語る素地を醸成するための学際的な研究・発信
※ 2つの研究題目の関係:地域の平和構築・維持のための動的な営みは、公衆衛生の実践において不可欠な要素である。
研究概要
(1)「ピンクの語り」の発表・公開
1.研究の背景
『横浜中華街の風土記』(2022年度芸術修士課程グループ研究)における個人研究では、地域の営みの基盤となる「地域の平和」について、横浜中華街における対立と協調の歴史を「一人称の語り」から調査してまとめた。「ピンクの語り」に象徴されるその営みは、今日の紛争や対立を抱える世界に誇れる横浜中華街の文化資産であるとした。一般の方が参照し資産として活用するためには、学会発表や論文化による一般公開が必要である。
2.研究目的
「ピンクの語り」を、学会発表や論文化により一般の方が広く参照できるようにする。
3.研究方法
発表・論文投稿対象とする学会・分野に関して、より具体的に情報収集し発表・投稿する。
4.期待される成果
中華街のひとびとが個人として語ってくださった「一人称の語り」を日本人である筆者が「ピンクの語り」として注目して発信することで、国や地域単位で語られることの多い、国や地域同士の関係性や対立について、個人レベルでも語り発信することが地域の動的な平和を維持することにつながりうることを強調したい。
(2)公衆衛生を地域・都市の社会学の観点から認識して自分ゴト化して語り合う、学際的な研究・発信
1.研究の背景
地域・都市の社会学の視点から公衆衛生行政を眺めると、より興味深く、俯瞰的な視点で各制度や事業を認識でき、自分ゴト化しやすいことに気づき、2023年の第82回 日本公衆衛生学会総会口演発表において保健医療行政関係者や医療福祉系学生の研修・実習における地域・都市の社会学の導入を提案した。
2.研究目的
公衆衛生を地域・都市の社会学の視点から学びなおすことで得られる学際的な面白さや公衆衛生の実践において役に立つことを、学生実習や研修などの手段により発信することを目的とする。
3.研究方法
公衆衛生を従来の公衆衛生行政の視点からだけではなく、地域・都市の社会学を中心とした社会学の枠組みから学びなおし、学生講義や研修等で実践する
4.期待される成果
公衆衛生を多角的に理解し、より興味を持って自分ゴトとして語り合うことで、GDPや出生率など数的には縮小社会であるともいえる日本社会において、納得感のある公衆衛生の実践につなげたい。
研究活動と成果
・「地域保健実践者が『地域・都市社会学的まなざし』を持つことの意義に関する考察」 第82回 日本公衆衛生学会総会 口演(2023年11月)
・「選挙権のないこどもをまんなかにするには?~コロナがきっかけで始まった小児科医師と保健所医師のやりとりから考える~」第132回 茨城小児科学会教育講演 (2023年6月)
今後の研究活動
(1)『横浜中華街の風土記』から派生した「ピンクの語り」(個人研究タイトル「中華街のひとびとの「なつかしさ」の語り コロナ3年目に聴いて100年後に語り継ぐ」)について、論文としての発表など、一般の方にも参照していただけるような形に整え、横浜中華街の文化資産として、地域の平和を築き守っていくために活用できるようにしたい。
(2)公衆衛生を、従来の公衆衛生行政の視点に加えて多角的に認識し、多様化・複雑化する時代における公衆衛生を自分ゴト化し、住民「と」語る、住民「として」語る素地を醸成するために、地域・都市の社会学の視点から公衆衛生を見つめなおし、学際的に研究・発信していきたい。