40代男性における新たな価値観を受容するデザイン
- 早川ゼミ

早川ゼミCチーム
逸本 寛明
岡田 修一
金沢 桃花
近山 理子
中西 慎
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1.研究背景と問題定義
本研究は、40代男性が新たな価値観を受容するために必要な「意思と能力」の変化を探求することを目的としている。特に、青年期以降の発達段階において、どのように多様性に富んだ人的ネットワークを獲得するための意思と能力が変化するのかを明らかにする。
先行研究によると、青年期以降の自己変容に対する志向性は加齢とともに低下し、現状維持や損失回避を重視し、自己概念を維持しようとする傾向が強いことが示唆されている。また、40代男性の自己変容に対する「意思と能力」の特徴の抽出を試みた実態調査では、社会的なつながりを求めながらも、交流に消極的な人は「自分の経験や実績が通じない違和感」、「周囲が楽しめているのに自分だけできていない焦燥感」、「新たな人の交流に対する不安」などの感情を抱えていることが明らかになった(図:1)。
これは、「人生半ばの過渡期」といった変化であり、過去も含めて現在の自分を振り返り自己と向き合い、人生のなかで達成してきたことや出来なかったことを自問自答する時期である。迷いや葛藤が増えるため、自分にとって成功や失敗したことに対して意味や価値を見出すことが必要となる(図:2)。
そこで、「40代男性が新たな価値観を受容するデザインとは?」を問題定義とし、具体的なアプローチを探求していく。


2.創造視覚化とプロトタイプ
40代男性における先行研究、社会背景を参考に、実態調査から得られた洞察をもとに、内省の機会を提供する「ドリップリフレクション」といったコーヒーを淹れるプロセスを通じた内省のデザインを提案する(図:3,4)。このデザインは、日常の中で心の余白を取り戻し、新たな価値観と出会った時に楽しめる状態を目指している。ワークショップ(図:5)やセルフワークを通じて、参加者の内省習慣や新たな価値観の受容に関する変化を観察した。



3.結果と考察
ワークショップの実施後、参加者は内省の頻度や深さが向上した。また、他者との交流を通じて新たな価値観を受け入れる姿勢が促進されたことが確認された。これにより、40代男性が多様性に富んだ人的ネットワークを形成するための意思と能力を高めることができる可能性が示唆された(図:6)。また、コーヒーを淹れる適切な工数と時間や、五感を感じる抽出のアプローチは、日常的にコーヒーを飲む習慣のある40代男性に有用であったと考えられる。
特に、自身の中にある大切な価値観を再認識し、その価値観(コア)と外の世界(新しい価値観)の間にある自由なスペース(余白)が創出された。結果、その空白(スペース)を作り出すことで、新たな価値観の受け入れなどの反応を選択する状態を作ることができたと考える(図:7)。


4.今後の展望
今後は、ワークショップ後の参加者同士のコミュニケーションを深める交流会の設定や、セルフワーク中と後に日常化に向けてモチベーションを維持できる仕組みづくりが必要と考える。また、内省の高まりと変化の視点ではさらなる検証が必要であり、日常における内省習慣の定着こそが重要と考える。