女性管理職のストレスに対する感情表現ワークショップのデザイン
- 早川ゼミ

早川ゼミ A チーム
小林 祐輔
西沢 仁美
西村 祐哉
森本 直樹
渡邉 玉緒
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背景と目的
現代において管理職が抱える業務負荷やそのストレスは深刻な課題である。特に日本では女性管理職の進出が遅れており*1、仕事と家庭の両立、職場での孤独感やプレッシャーなど、多くの女性が「モヤモヤ」とした感情を抱えながら日々を過ごしている。本研究はそうした女性管理職が抱える感情に対し、アートと吐息を活用して感情に向き合いそれを表現する体験を、デザイン思考のプロセスを用いてデザインすることを目指したものである。
リサーチクエスチョン(以下RQとする)の設定
女性管理職の増加が見込まれる中、女性は男性よりも職場でのストレスを感じやすく、特に女性管理職では突発的な業務の多さや役割の不透明さが主な要因となっている2。しかしこのような女性管理職を対象とした先行研究は極めて少ない3。これらの課題に対応するため、RQを「女性管理職の職場におけるストレスの実態」と設定した。
問い
まずはその実態を把握するための調査を行なった*4, 5。彼女らは多様なストレスを「モヤモヤする」と表現し、【職場でのストレス要因に対する心理的反応にあえて気づかない、または抑圧している状態】が存在することが明らかになった。
そこで、本研究では女性管理職が抱える「モヤモヤ」を認識・表出することで、ストレスの実態を明確化し、軽減・緩和の一助とすることを目指し、【女性管理職が、職場のストレスに起因する感情に気づき、その感情を表現する方法とは】を問題定義とした。
創造視覚化
これまでの調査を基に「感情の気づきと表現」「時間の蓄積」「コミュニケーション」をキーワードとしてアイディアを検討し、最終的なプロトタイプを「感情を色で表現し、吐息で模様をつける深呼吸のマーブリングワークショップ(以下WSとする)」とした(図1)*6, 7, 8。

プロトタイプ
より良いWSをデザインするために事前準備における企画検討や会場環境、動線、備品などのディテールにこだわり、参加者とって一連のジャーニーにおいてストレスや不安をもたらさず、リラックスして楽しんでもらえるようホスピタリティを徹底した。具体的な流れは下記の通りで、音楽や飲み物、紙に至るまで先行研究の確認や専門家への相談を通じて詳細に設計し、WSを実施した(図2・映像)

検証
気分調査票(気分尺度)およびアンケート・インタビューの定量・定性分析により、WS後には不安・緊張や憂鬱感の減少、爽快感の増加が確認された(図3)。また、インタビューからは「自分と向き合えた」「前向きな感情になった」「モヤモヤが薄まった」などのポジティブな意見が得られ、自己の内面と向き合う機会を提供できたと考えられる。

総括
本WSを通じて、参加者が自分自身の感情を表現しそれを言語化するプロセスを経ることで自己と向き合う時間を創出することができた。
また、参加者同士の視座の交換や相互交流を通じて多様な価値観や考えかたに触れる機会が提供され、それが自己の内面的な洞察をより深める契機となった。この結果、各々に前向きな感情が醸成され心理的なストレスの軽減や緩和にもつながる可能性も示された。
なお、本研究は2回のWSという限られたサンプル数での実施であるため、今後は実施回数やサンプル数の拡充、および比較対象となるWSを設定し、効果の信頼性と一般化可能性を高める必要がある。