新橋 間(あわい)風土記 〜重なりあい、浸透し合う、複雑で雑多な新橋〜
- 野村ゼミ

野村ゼミCチーム
岩本 剛
⼤崎 ⿇⾥⼦
中村 健⼀
⻄野 仁
⻄⼭ ⾥佳
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1. 研究の背景と目的
新橋は「サラリーマンの街」としての印象が強いが、江戸時代以降、震災や戦災を経験しながら、多様な文化を受け入れ、「賑わい」のある街として発展している。しかしながら、都市開発や経済変動により地域コミュニティの継承が困難になっている。
職住の分離が進み、商業地としての側面が強まる一方で、新橋には新旧の要素が混在し、「バラバラなまま、お互いを活かし合う関係性」が息づいている。本研究では、これを生み出してきたモノ・コト・ヒトを文化資産として捉え、それらの相互作用を「間(あわい)」として定義し、新橋の「賑わい」を継承、発展させるためのデザインを提案する。

2. 研究対象地域の設定
新橋は江戸時代の埋め立てによって形成され、自然特性は乏しいが、交通の要衝として発展した。変化の速度が速く、狭いエリアに各時代の特徴が共存する。こうした都市特性が、新橋の文化的アイデンティティに影響を与えている。

3. 「新橋間風土記」が目指すもの
現在の新橋は職住分離が進み、地域で暮らす人が減少した商業地域である。しかし、商店会や町会、氏子などのコミュニティが今なお残っている。
再開発に伴い、「どこにでもある街」になることを懸念する声がある一方、新橋の「らしさ」に対する認識は人によって異なる。それは、新橋が新たな参入者を受け入れ、同化せず互いを尊重し共存してきた特性による。
本研究では、この地域特性を未来に継承し、新橋の「賑わい」の本質を明確化することを目指す。この特性を新たな参入者にも広め、地域の魅力を高めながら、人々をつなぎ、増やすためのデザインを提案する。
4. 対象地域固有の課題
新橋の「地域らしさ」をモノ・コト・ヒトの観点から整理すると、以下の特徴がある。
モノ:「烏森」と「新橋」の異なる地域性や、複数のランドマークが生み出すアイデンティティ。
コト:「花街」「闇市」「繁華街」など、時代ごとに異なる人々が集い続けることで形成された「賑わい」の文化。
ヒト:地域コミュニティと新たな来訪者が相乗的に関わることで育まれる精神性。
しかし、職住分離、テナント化、再開発により、これらのバランスが崩れつつある。

5. プロトタイプの提案
「モノ・コト・ヒト」の記憶を継承する人(コミュニティ)の価値を高め、次世代、新参者、来訪者とつながる仕組みを提案する。新橋の人々が「新橋らしさ」を客観視し、再認識できるプロトタイプを構築し、地域活動の継承を担う「青年会」と連携して地域の活性化に寄与する。
6. 研究の展望
本研究では、新橋の歴史とコミュニティの変遷を踏まえ、「地域らしさ」の継承に関する課題を明らかにした。インタビュー調査を通じ、地域に根付く人々と新たな参入者の視点を整理し、継承すべき文化の本質を探った。
今後は、本研究の成果を活かし、地域住民が望む「新橋らしさ」を再開発後も維持・発展させるための具体的な施策を、コミュニティと協力しながら実践していく。
