就職活動生の内省を促す対話カードの開発

  • 大学院研究員

青山 春華
奥井 伸輔
三國 信夫
瀬戸 亜美

研究概要

本研究は、日本における若者の早期離職の一因とされる「不本意就職」(石黒, 2017; 高崎, 2016)を減らし、就職活動生が自らのキャリアをより深く内省できるよう支援する目的で、対話カードを開発・改良してきた。デザイン思考のプロセスに基づいて2021年度に基本的なカードの原型を作成し(三國, 2022)、就職活動生が話し手となり研究員が聴き手となる対話の中で内省が深まることを確認した。しかし、研究員以外が聴き手となる場面でも効果を発揮させるには、さらに改良が必要と判断された。2022年度からは就職活動生同士が互いに話し手・聴き手を担う形へと開発を進めることで、自身とは異なる視点を取り入れた内省効果の向上と、聴く力の育成をねらったカードの改善を行った。
2023年からは、社会実装に向けて最適な利用シーンの特定を目的に研究を行っている。2023年度の研究では、利用者を想定した教員へのインタビューを行い、その結果の分析から、大学における就職支援の位置付けの違いによって、カード利用意向が変わる可能性を示唆した。
2024年度は、大学教員やキャリアサポートセンター職員への追加インタビュー(8名)を実施した。KJ法を用いた分析から、大学では就職活動の早期化や学生を取り巻く環境の変化を踏まえた支援が必要であることを認識しつつも、学生との関わりの遠さ、リソース不足などの理由から、十分な支援が行えていない現状が明らかになった。また、就職活動が本格化する前の早い段階から、考えて話す、内省するといった機会を持つことの重要性に関する指摘も見られた(インタビュー結果は添付資料参照)。今後は、こうした意見を踏まえたカードの改良や、活用方法を具体的に示すプログラムの構築、効果を示すデータの収集、そして大学での実践的導入を視野に入れた方策を検討していく。2025年度には、まずは、2024年度の研究成果からキャリア支援担当者・教員が利用することを前提に、利用シーンを深堀する。その後、改良版のプロトタイプの作成、検証を行い、社会実装に近づけることを目指す。

研究活動と成果

1. 背景
2024年度までの研究において、就職活動生の「不本意就職」という課題を解決するための手段として、「就職活動生の内省を促す対話カード」を開発してきた。プロダクト利用者として大学生だけでなく大学教員、大学キャリアセンターを巻き込むと効果的であるという仮説を構築したが、次の課題が残った。
・カードの改良・カード活用プログラムの構築
・カードの効果実証
・普及に向けた具体的な方法の検討
社会実装を目指し、これらの課題を踏まえ改良開発を行う。

2. 方法
2-1.社会実装に向けた利用機会の深堀(4-6月)
本対話カードは大学生が使うことを想定したカードであるが、普及に向けては大学のキャリアセンター職員やゼミ教員など学生と接点を持つ人・機関・機会を介することが必要である。2025年度の研究においては、大学生の就職活動に関わる人々のニーズ・課題を2024年度に実施済みのインタビュー結果から深堀し、有効な利用機会を特定する。

2-2. 利用機会に応じたカードの改良(7-1月)
修了研究時に作成した対話カードは、就職活動中、特に課題を抱えやすい就職活動中盤から終盤での利用を想定して作成している。しかし、上記で特定する利用機会は、より初期の段階、もしくはキャリア教育内での利用も想定されるため、その際にはカードの内容を見直すこととする。利用シーンに合わせたプロトタイプを作成・効果測定を行い、カードの磨き上げを行う。

上記研究を下記チームで行い、2026年3月に研究成果を報告する。