難病患者における『心地の良い居場所』としてのX(旧:Twitter)は機能しているか: 事例研究
- 大学院研究員
梶田 直美
研究概要
本研究では、難病患者がSNS「X」(旧Twitter)を「心地よい居場所」として活用しているかどうかを事例研究として検証した。筆者は、2021~2022年度にかけて社会人学生向けのオンライン学習環境コミュニケーション支援ツール「ANnKA-HOOK」を開発しその効果を検証していた。その後、「ANnKA-HOOK」を難病患者に応用できないかと考えた。しかし彼らに応用する場合、身体的制約などの要因から同ツールの導入は困難と判断した。そこで、既存のSNSであるXが、同じ疾患を抱える者同士が情報交換や励まし合いを行う「心地の良い居場所」として機能する可能性に着目した。調査対象は主に全身性強皮症患者とし、筆者は自身のXアカウントを用いて2024年4月から2025年3月まで参与観察を実施した。投稿内容やハッシュタグ(例:「#全身性強皮症」「#難病園芸部」)の利用状況、エンゲージメントを記録した。その結果、難病患者は、自らのプロフィールに病状や病歴を表し、ハッシュタグを活用し同病という共通の基盤がある人達をフォローしあい「つながり」を形成する。その後、日常の体験や治療過程、趣味に関する情報を共有・発信することで関係性を醸成させている。また病気に関連する最新情報が得られることから未来への納得感があること示された。またXでは匿名性を保つことができるため「素の自分」を出しやすいことも患者のメリットと捉えられている。一方で、共感疲労や誤情報などの課題が浮上したことも確認された。しかしながら、本研究を通じて、Xは難病患者にとって有効な「オンライン上の心地の良い居場所」となり得る可能性が示唆された。
研究活動と成果
難病患者のX(旧Twitter)の参与観察とそのまとめ及び考察
今後の研究活動
引き続き、参与観察を行いたい。加えて筆者が行っている「#病名アクキー」プロジェクト(ヘルプマークと併用装着する小物)を通じた難病患者のエンパワメントについて調査をしたいと考えている