真鶴町の地域研究
- 大学院研究員
都築 勝也
研究概要
研究テーマ:真鶴町の地域研究
1. 研究の概要と位置づけ
真鶴町は、神奈川県の南西部に位置し、面積は約7.02平方キロメートル、人口は6511人の小さな町である。神奈川県で唯一の過疎の町で、主な産業は漁業と石材業といわれているが、現在の就労者はそれ程多くはない。真鶴町の特徴として1993年に制定された美の条例があり、この条例の規定を具体的に表した美の基準がある。美の基準の中に静かな背戸がある。本研究では、背戸を「車が通れない生活用の道」と定義し、背戸の美しさについて研究を行う。真鶴町と美の基準については、様々な先行研究がある。一方で美の基準を制定した際に静かな背戸というキーワードは、まちづくり発見団報告書から出て来たものである。本研究では、真鶴の背戸がなぜ美しいのかについての考察を行い、背戸の保存と発展の可能性を探る。
2. 背戸の形成と課題
真鶴半島は、火山活動により形成されており、半島の中にいくつものピークがある複雑な地形をしている。現在は、山側のJR東海道線の真鶴駅南西側がまちの中心となっているが、かつては漁業や海運業で栄えた町であり、真鶴港を中心にまちが形成されていた。真鶴港の周りはすり鉢状の地形となっており、高低差がある事から、主要道の高低差を繋ぐ階段や裏道として背戸道が形成された。背戸は道幅が狭く建築基準法などにより、住宅などの建て替えができない、消火活動など防災面、バリアフリー化が難しいなどの課題がある。
3. 背戸の美しさとは
背戸の美しさについて3つの仮説を立てた。第1に背戸の道幅(D)と隣接する建物や塀の高さ(H)がほぼ人間の身長となっている。D/H=1であり人間が美しいと感じる。さらにヒューマンスケールで安心感も与えられている。第2に美の基準により構成されている素材が地元でとれた石や生け垣、木造の住宅であり自然の素材がつかわれており、これが美の基準により調和することで美しい。第3に背戸は曲がりくねっており、先が見通せないワクワク感がある。このような要素により背戸は美しいと言えるのではないか。
研究活動と成果
学会発表、雑誌投稿などは特になし
今後の研究活動
真鶴町の地域研究を継続
・仮説の検証
・背戸に関するフィールドワーク
・生け垣や石垣など自然素材が配置された空間に関する文献調査
・路地に関する文献調査
・背戸の地図作り