緑資源からみる地域環境 ―東京都町田市及び武蔵野市における緑資源を活用した街づくり-
- 大学院研究員
佐栁 融
研究概要
本研究は、修士研究で得た学際的な視点と緑資源のポテンシャルに着目し、日常生活で目の前にありながら見過ごされるモノの歴史的な背景や残された意味を通じて地域環境を明らかにすることで、現在や未来の街づくりに貢献するものである。本年度は、次の2つの地域を研究対象とした。
研究活動と成果
・東京都町田市
谷戸は全国に存在し、その機能性や利用区分、宗教的側面、呼び名などが異なる事が分かった。そして、町田市の谷戸は、地域の土台で共通項でもあり、自然由来の文化資産であると言える。また、市内の屋敷神は、残された方は異なるが、共有地や私有地に屋外神や屋内神の両方で祀られている。さらに、市街地ではそれを知る手がかりとして、特徴的な樹木とセットで残されている事例もある。これらは、自然資産の土台である谷戸を利用した、人々の生活を反映した人由来の文化資産として注目している。
町田市は、現在では市街も郊外も住民も新たな世代が流入し、町田市の特徴でもある谷戸も造成され姿を変え、身近な屋敷神や樹木の経緯や意味を知る人も僅かとなるなど課題を抱えている。町田市では、「町田市住みよい街づくり条例」を改正し、市内各地の歴史や景観等の変化に対応するため、景観規制や歴史・文化継承など市民活動の支援を強化している。佐栁も街づくり審査会委員や街づくりフォーラム、ワークショップに参画し、ネットワーク作りと市や市民の課題把握と解決に研究成果を還元すべく活動した。その結果、2025年度は東京都町田市地区街づくり課からの協力も得られ、景観づくり市民推進員にも任命された。なお、町田市の谷戸の機能性や屋敷神、風土樹木に関する先行研究はない。
問い(2024年度時点)
市民や行政が身近なものを通じて地域全体を一体として捉えるためには何が必要か
主な研究活動
通年:文献調査及びフィールド調査、住民及び博物館学芸員、図書館司書等にヒアリング調
査実施
2024年4月 課題把握等のため町田市街づくり審査会委員や町内会に参画
2024年12月IDS研究員及び修了生による試行的な町田市フィールドワーク実施、特定地区の
定量調査実施
2025年2月 野村ゼミ研究報告会にて活動報告、町田市街づくりフォーラム・ワークショップに参加、町田市景観づくり市民推進員に応募、町田市より調査協力了承
2025年3月 町田市景観づくり推進員に選出
・東京都武蔵野市吉祥寺東町
修士研究の協力先である武蔵野市緑のまち推進課や武蔵野ふるさと歴史館に研究成果を報告し、緑資源の利活用について提案を行なった。その結果、武蔵野市緑のまち推進課より吉祥寺東町二丁目の公園遊具更新に本研究を活用したいと要請があり、該当地域に関する文献調査やフィールド調査、他地域の比較調査等を改めて行い、同課責任者や担当職員と整備に向けた報告と提案をした。
主な研究活動
2024年4月~7月 武蔵野市関係各所へ研究報告及び提案
2024年8月 武蔵野市緑のまち推進課より協力要請、追加調査実施
2024年11月武蔵野市緑のまち推進課に調査報告及び提案
2025年2月 野村ゼミ研究報告会にて活動報告
今後の研究活動
・東京都町田市
調査を継続し、その成果を景観づくり市民推進員として発信する。また、市街と郊外の特定地区をモデルとした調査を継続して課題と解決策について客観的評価を行う。さらに、郊外地の特色である谷戸の機能性と住民活動の把握のため、郊外地の農地で自ら農業に従事して生活や流通等の課題精査と解決策を検討する。
・東京都武蔵野市吉祥寺東町
武蔵野市緑のまち推進課より、次年度以降も別の公園遊具更新にも協力要請があるため、次年度も調査範囲を広げ、行政への協力を継続していく予定である。