新社会人の成長につなげる失敗経験のリフレクションデザイン
- 早川ゼミ
早川ゼミEチーム
秋田 大介
岡田 未奈
東宮 美樹
渡部 玲
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日本人は「失敗」を恐れており、特に新社会人は失敗をネガティブに捉える傾向にある。新社会人が失敗を過度に恐れることは、モチベーションの低下につながるだけでなく、挑戦や成功を求める気持ちも弱めてしまい、離職につながることがある。新社会人の早期離職は社会課題の1つとなっている。このことから、新社会人が失敗から早期に立ち直ることを目的とした研究調査を行った。
調査を基に、失敗後におとずれる「落胆」や「自己否定」という挫折状態に長く留まらないための他者との関わり方について検討した。失敗を「成長の機会」として次の行動変容に移るようにするためのプロトタイプとして、「失敗スタンプラリー」を制作した。
このスタンプラリーでは、今後起こりうる失敗を事前学習できるほか、実際に失敗を経験した後に他者とそれを共有することで、失敗の振り返り(リフレクション)ができる。さらに、集まった失敗経験のデータを分析して、人材育成や組織改善に活かすことも可能である。
人材系企業Jの入社1~3年目を対象に、スタンプラリーを使ってもらうためのワークフローを考案したのち、プロトタイプの効果を検証した。
主な結果が以下の3点である。
(1) 入社1、2年目の社員は失敗に関して「恥ずかしいこと」、「回避したいこと」、「周囲に迷惑をかけること」、「してはいけないこと」などのネガティブなイメージが軽減された。
(2) 一方で、3年目の社員は不安を感じる度合いが増加しただけでなく「学びや成長に必要なこと」という捉え方が減り、失敗に対してネガティブになっている。
(3) コンテンツ評価では、「失敗・上司のやらかし談」や「失敗経験インタビュー」など、上司や先輩社員の失敗経験を知ることでの心理的効果が見られた。
今後は、日常的に使用してもらう仕組みや、自分の投稿をプッシュ通知で確認できるリマインド機能など、更なるリフレクションの仕掛けを検討し、改良したい。
日本人の、失敗を恥と捉える文化を変えることは難しくても、このプロトタイプをきっかけに、失敗しても世間の声をうまく利用して挫折状態からすぐに抜け出し、その失敗を糧に次の挑戦に取り掛かれる社会に変化していくことを目指している。
プロトタイプのターゲットは新社会人だが、多くの社会人にとって本研究の取組みが、日本全体のチャレンジ精神にあふれた社会創造に寄与することを願っている。